ロレンツォの賭け
正式にドゥカティへの移籍が発表された
ロレンツォですが、大きな賭けに出たなという印象。
ロレンツォのライディングスタイルとドゥカティの相性が
良くないのは、過去に書いたとおりで、当然、彼自身も
承知しているはず。
それでも移籍したのは、かつてアプリリアでコンビを組んだ
ジジ・ダリーニャならば、彼好みのマシンに改善してくれるであろう
という希望的観測に基づく部分が大きいと思う。
ロレンツォのライディングスタイルの特徴は
面圧のコントロールと定常旋回力。
彼はコーナーのエントリーから立ち上がりまでを綺麗な
定常円でこなすスタイルで、それを可能にしているのが
タイヤへの面圧をコントロールしてグリップを綺麗に引き出す
丁寧なマシンコントロールとアクセルワーク。
そしてこれを支えているのがフロントのスタビリティが高い
ヤマハのマシン造り。
彼にとってはこのフロントのスタビリティとフロントタイヤのグリップ感が
命綱といっても過言ではありません。
このフロントのスタビリティを失った時の脆さは
何度も目にしてますよね。
翻って、ドゥカティというかホンダもそうだけど、V4エンジンのマシンは
このフロントのスタビリティが低い印象。
これは重量物のほとんどが前一箇所に集中している直4と
分散しているV4のエンジンレイアウトによるものと思うけど
コーナーエントリーから旋回していく特にクリップを過ぎた段階で
フロントの荷重というか面圧が変化しやすい傾向がある。
だからV4エンジンの理想の乗り方はマルケスのように
定常旋回ではなく、V字旋回。
フロントにたよって曲がっている時間を極力短くして
グル~~~ンと回るというより、バキッと回るイメージ。
コーナー前半はフロント、後半はリヤというように
使うタイヤをはっきり分ける。
両輪のバランスで乗るロレンツォとは対局の走り。
ロレンツォに近い乗り方をするペドロサがタイトルと
無縁っていうのは、その辺のマシンとスタイルの
マッチングの問題もあるでしょう。
そういう意味でロレンツォとドゥカティの相性は最悪と
言ってもいいと思うけど、彼の好みを熟知している
ジジさんが、どれだけロレンツォ好みのマシンに仕立てあげられるか。
と言ってもV4(L4)のエンジンレイアウトは捨てられませんから
その制約の中で、どういうマシンを作ってくるかですね。
その辺をうまくやってくれるであろうという点に賭けての
移籍劇だったと思います。
しかし、もう一回言うけど大きな賭けに出たなぁという印象。
もちろん、失敗してヤマハに戻ってくることも考慮しての
今の時期(31歳)、2年契約だと思うけどね。
賭けに失敗してもヤマハで取り戻す時間はあると。
その時にはロッシは居ないしね。