アジャスト能力
オースチンでの走りを見ていて気がついたのは
特にマルケスがそうだけどロッシも含めて
ブレーキングの安定感が増していたこと。
カタールでは止まりきれないシーンがアチコチで
見られたのに比べて、ちゃんと止まるというか
マルケスは昔ほど角度はついてないけど、ブレーキングドリフトが
復活してましたね。
今シーズンからフロントが17インチになって接地面積が
減ったということと、根本的にゴムの層が薄いミシュランのフロントは
限界が低く、去年みたいなハードブレーキングをしても
止まりきれないというのがその理由。
もうひとつは今シーズンから統一ソフトになって
それまではコーナーごとに細かく設定されていたエンジンブレーキ
リヤタイヤが接地した時に発生するバックトルクが
1種類しか設定できず、リヤタイヤのストッピングパワーが小さくなったこと。
去年までのマシンはフロントタイヤの制動性能は既に使い切っていて
それよりも短く止まるには、リヤタイヤの制動力が重要と
ホンダとヤマハの両エンジニアが言ってましたからね。
これが細かく設定できなくなってブレーキングのリヤ側の
ストッピングパワーが減って、結果的にフロントを押す形になっている。
これがコースアウトしてしまう原因のように思われます。
その点、オースチンで感じたのはブレーキのかけ方がソフトに
なっているということ。
つまり、ガツンとかけるのではなくジワーーとかけることで
フロントへの過度な荷重移動を避け、フロントタイヤの
接地面の極端な変化を避けつつ、リヤタイヤはずっと接地した状態を
維持して、リヤ側のストッピングパワーを有効に使う方向に
セッティングと乗り方でアジャストしているという感じ。
フロントサスのストロークスピードもいじっているか。
開幕戦でロレンツォが独走したわけだけど、それは彼の乗り方が
そもそもブレーキングを優しくかけて、フロントタイヤの接地面の
荷重を大きく変動させない乗り方だったから、ライディングや
セッティングの大きな変更をする必要が無かったという面が大きいか。
今年のオフテストだけではその辺のアジャストが間に合わず
ここに来て、ロッシ、マルケスは遅ればせながら対応してきた感があるね。
マルケスなんか、去年までだったらほとんどジャックナイフみたいな
状態でも平気で寝かし込んでいたけど、そもそもジャックナイフみたいな
状態にならないように乗ってますよね、今年は。
加えていうと、そういう意味ではアレイシはややアジャスト能力が
欠けるというか、まだフロント攻め過ぎのきらいがあるか。
この辺のアジャスト能力の有無が一流と超一流の分かれ目のように思います。
ビニャーレスはそもそもモトクロスの出身で、グリップの低いコースで
走る競技で育った人ですから、フロントに頼った乗り方はせず
立ち上がり重視の乗り方をしているのが、今年のタイヤに合っている要因か。
彼は今年のタイヤに対する不満のコメントがゼロという珍しい存在です。