2019年型RC-Vのネガとポジ   2019年を振り返る MOTOGP編

2018年シーズンを終えてホンダ陣営が考えたのは

2年連続で迫られているドゥカティとの差を

縮めるには、トップスピードを伸ばすことが重要。

そのために、ラムエアダクトのレイアウトを変更し

それまでのカウルトップから吸い込んだ空気を左右に分けて

フレームサイドから入れるのではなく、吸い込んだ空気を

まっすぐエアボックスに導くレイアウトへの変更が必要。

そのためにはエアダクトをフレームのステアリングヘッドを貫通するレイアウトに

する必要があり、それによりステアリングヘッド周辺の剛性バランスが

変わってしまう可能性があって、その辺の塩梅が難しいというネガティブ面も

内包する改良となりました。

 

果たして、2019年が開けてみると、このホンダの狙いは良きにつけ

悪きにつけ当たることとなりました。

良い方は、マルク・マルケスが他のライバルを寄せ付けない圧倒的な

強さを発揮して、4年連続となるタイトルを獲得したこと。

これはトップスピードが伸びたことによってこれまでのような

コーナーの進入ブレーキング、突っ込みで頑張る必要が無くなったため、

フロントからの転倒、スリップダウンが減ったことにより、

単純にライダーの怪我が減って、フィジカル的にいいコンディションで

走れるケースが増えた。

それからマシンも修復するとはいえ、転倒前と100%同じ状態に復元するのは

難しくライダーのフィーリングレベルでは違和感が残る場合もしばしば。

それが転倒が無くなったことによって同じマシンで

金、土、日と継続したセッティングの積み上げが出来るようになって、

セッティングの充実度が高まり、それが決勝結果に結びつくようになりましたね。

今季のマルケスはタイヤマネージメントが秀でているシーンが何度か見られましたが

あれなんかはこの効果が顕著に表れたと言えるでしょう。

 

一方、ネガティブファクターは、

やはり、ステアリングヘッドを貫通するダクトを採用することに

よって、ブレーキングが難しいマシンになってしまいました。

これは通常ステアリングヘッド周辺がブレーキングでグッと変形することによって、

タイヤのグリップ限界がライダーに伝わっていたのに、ここが固くなって

変形がしにくくなり、タイヤの限界の情報がライダーに伝わりにくくなったためだと

推察されます。

特にクラッチロウとロレンツォは最後までこの特性に馴染めませんでしたね。

これはマルケスと、ほか2人のブレーキングスタイルが異なるからですが、

そういう意味では2019年モデルのRC213Vはマルケスだけが使いこなす事のできた

特殊なマシンということが出来るでしょうね。

 

今後、興味深いのは今シーズンのマルケス圧勝の結果を受けて

ホンダが来季に向けて、どういう方針を取ってくるかということです。

相変わらずマルケスの天才的な感覚に頼ったトンガったマシンを作り続けるのか

速さはそのままで、より間口の広がった万人受けする方向にマシンを振るのか。

その辺はクラッチロウ、アレックスのリザルトを見ると見えてくるかも知れませんね。

技術者的にはマルケス頼みのマシンと言われるのは本意じゃ無いでしょうから。