V4勢の悲喜こもごも
今シーズン、大幅にマシンコンセプトを見直したホンダですが、
ここまでの成績を見る限り、ニューコンセプトのマシン作りは
失敗に終わったようですね。
ただ、そのホンダを横目にKTMも結構失敗しているようで・・・。
どちらのメーカーも今のミシュランのタイヤに合わせてマシン作りを
見直した結果、失敗したというところでしょうか?
事の起こりは2020年、ミシュランが新しいリヤタイヤを投入したことに
始まります。
この新しいリヤタイヤはそれまでのタイヤよりもグリップが上がっていて
それによって、前後のタイヤのグリップバランスが変わりました。
面白いのは、このニューリヤタイヤ投入以降、直4マシンであるヤマハと
スズキが急激に好調になったことですね。
リヤのグリップが強くなったことで、直4のマシンのバランスにマッチしたのが
原因だったようです。
それまでの数シーズンはもはやV4エンジンでないと勝てないとまで
言われるくらい、圧倒的にV4のマシンが速く強かったわけですが、
逆に従来のタイヤのグリップバランスとベストマッチすぎて
新しいタイヤにマシンバランスが合わなかったようですね。
このあたりはドゥカティの関係者が証言しています。
2020年、ホンダは未勝利、ドゥカティはわずか2勝に終わっています。
しかし、面白いのは翌2021年シーズン、ホンダとドゥカティの成績が
はっきりと明暗わかれたこと。
早くもこの新しいリヤタイヤに対応してきたドゥカティに対して、
ホンダは変わらず苦戦することとなります。
実はドゥカティはフレームナンバーから判別すると、フレームに関しては
2020年から2022年までずっと同じ仕様のまま、使い続けているようなんですよね。
つまり、ドゥカティはフレームなどをいじることなく、タイヤに対応してみせた。
恐らく2021年に登場したリヤのライドハイトシステム通称シェイプシフターを
モノにしたことが結果的にミシュランの新しいリヤタイヤを有効に使いこなすことが出来た要因ではないでしょうか?
リヤのグリップの強いタイヤを強く押し付ける仕組みで対応してみせた。
一方のホンダはエースのマルクが万全ではないという事情もあって、2021年はシーズンわずか2勝。
この結果を受けて、マシンの開発の方向性をより、リヤタイヤを上手に使える方向へと
転換することになります。
恐らくですが、2022年型マシンは重量配分をやや後ろ寄りにして、フロントの荷重を減らす方向にして、フレームをよりしなやかにして、リヤタイヤをしっかりとしっとりと路面に押し付ける方向へと舵を切ったようですね。
しかし、結果論からいえば、この方針転換はここまでのところ失敗していて
ライダーからは、フロントタイヤのグリップが感じられない、旋回性が低いという
コメントが聞かれ、しかもリヤタイヤの影響度合いが増したことで、リヤタイヤの
性能を発揮できなかった時の成績の落ち込みが大きいというネガがはっきりしました。
面白いのは、今年のKTMに乗るライダーからも同じようにフロントタイヤの
接地感が薄く存在感が感じられないというコメントが聞かれることです。
今年のKTMは大きくマシンを変えてきたんですが、どうやらホンダと同じ方向で
マシンを変えてきたようですね。
そして同じような失敗をしている。
ルーキーの2人、ラウルとレミーが全く精彩を欠いているのは、MOTO2で使うダンロップに比べて接地感の薄いミシュランの特性に加えて、今年のマシンのこの問題が
大きく影響しているのかも知れないですね。
KTMもその失敗は気が付いていて、カタルニアテストではディメンション変更できるフレームを投入してきて、ジオメトリーの最適値を探そうと躍起になっているようです。
来期に向けて、ホンダとKTMは大きな宿題を抱えているような状態ですね。
そして、今のところ、実は一番今のミシュランに対応できていると思われるのが
アプリリアです。
実は、今の90度エンジンになって車体を一新したのが2020年で、ちょうどミシュランが
新しいリヤタイヤを投入した年なんですよね。
つまり、最初からこのマシンに合わせてイチからマシンを作ることが出来た。
実際、今年の成績を見ても、タイヤのパフォーマンスによる成績のアップダウンが
小さく、一番安定しているといっていいでしょう。
路面のグリップが低いと言われるカタルニアでの快走もそれを裏付けていると思います。
2020年に投入したミシュランのニューリヤタイヤはMOTOGPの勢力図に大きな影響を与えたわけですが、ミシュランは来期、新しいフロントタイヤの投入を予定していると
予告しています。
このタイヤの投入が再び、勢力図を揺るがすことになるかも知れません。
どのメーカーもこのフランス製のガラスのように繊細なタイヤに振り回されている・・・・。