なるか11年ぶりのタイトル

 かつてはWSBで圧倒的な隆盛を誇ったドゥカティも現在は2011年のカルロス・チェカ以来タイトルからは遠ざかっています。

 しかし、今期は、第4戦を終えた時点で、アルバイット・ドゥカティのアルバロ・バウティスタがランキング2位のカワサキジョナサン・レイに対して36ポイントのリードを

築いており、タイトル争いをリードする形になっています。

 

 注目すべきはその勝ち方、レースの内容で、かつて開幕戦から圧倒的な速さを武器に

勝ちまくった2019年とは全然違うんですよね。

 

 2019年のV4パニガーレ+バウティスタのコンビは開幕から16連勝(SPレース含む)を飾りましたが、勝ちパターンはロケットスタートから飛び出して、早い段階で後続に

マージンを築くと、後半はそのマージンをコントロールしながらの戦い方となっていました。

これだとレース前半でマージンを築けた時はいいけど、築けなかった場合あるいは

後半追いつかれてしまうと脆くって、実際、第5戦以降はカワサキのレイにキャッチアップされるレースが増えて、最終的には逆転でタイトルを許すことになりました。

 

 ところが今季、ここまでの戦いぶりを見ると、スタートから飛び出すというよりは

むしろ、スタート直後は2,3番手に位置して、そこから上位に進出し、トップに立つと、そこから更に突き放すという強いレース運びが目に付きます。

 

 これはドゥカティ陣営が完全にゴールまでペースを維持できるようタイヤを完全にマネージメントしているから出来る戦い方だと思っています。

 

 WSBの場合、とにかくワンメイクタイヤであるピレリタイヤをいかに使いこなすかが

タイトルのカギになってきますし、最大のライバルであるカワサキ+レイは

このピレリタイヤの使い方が抜群に上手く、それが何度もタイトルを獲得してきた要因でしょう。

 

 その点、これまでのV4パニガーレは圧倒的な動力性能を見せて、予選のような一周の速さは見せるものの、レースでのタイヤの使いこなしという面でカワサキほどの安定感に欠けていて、レース終盤までタイヤが持たないというレースが去年まではしばしば見受けられました。

 そのパワフルなエンジンパワーを路面に伝達するためにはハード目のタイヤじゃダメで、

ソフト目のタイヤを履かざるを得なくって、

そのためにレースではタイヤが持たないという悪循環にハマってしまっていたようにも思えます。

 

 今年、4年目となったV4パニガーレはノーマルの外見から大きく変更をしない

というスーパーバイクのレギュレーションに沿って、その範囲内で大きくタイヤにマッチする方向でマシンを改良してきた感じですね。

 特にリヤのトラクションの改善に力を注いできたようです。

具体的にはシート下の燃料タンクの増大、それに伴う表に出ているタンクカバーの

小型化、リヤスイングアームの改良でしょうか。

今年のバウティスタのタイヤチョイスを見ていると、ライバルよりもソフト目の

タイヤを選ぶことはなく、むしろライバルであるレイなんかと同じタイヤを

選んでいて、それでいて速く、かつレースできっちり持たせることが出来るパターンが

多くなりましたね。

これはリヤのトラクションが良くなった結果、ソフト目のタイヤを選ばなくても

有り余るパワーを有効に路面に伝えられる、かつ、スピニングが減ったから

タイヤの消耗も抑えられるようになったと見ていいでしょう。

 

第4戦ミザーノの決勝当日は非常に気温が上がり、日照も強く路面温度が高い状況でしたが、ドゥカティ陣営はライバルよりもやや固めのタイヤを選んだようでしたが(SCXのBタイヤ)

きっちりと速さを発揮しつつ、タイヤの持ちをコントロールしきって、メインレースを

2つ共に取りました。非常に強い勝ち方でしたね。

4戦、アラゴン、アッセン、エストリル、ミザーノとキャラクターも気温も違う

4種類のコースで万遍なく速さ、強さを発揮できたところを見ると、今期、今後走るどのサーキットでもこの速さ、強さを維持できるのではないかと思います。

 

それにしても、V4パニガーレデビューからの4年間のマシンの変遷を見ると、

その凄まじい改良のペースというか、資金のつぎ込みぶり、力の入れ方に、日本メーカーとの差を感じます。

この辺り、いかにもレースの成績に全振りの会社の姿勢の表れとみていいでしょう。

(親会社のアウディからのプレッシャーもあるんでしょうけど)

 

 

果たして、今年はドゥカティ悲願の、収穫の秋となるでしょうか?