オランダGP あれやこれや

前半戦の締め、オランダGPが終了しました。

内容的にはなかなか波乱があったようですね。

 

前回のザクセンリンクとは打って変わって、高速コーナーが多く

ハイダウンフォースセットだと非常に曲がりにくくなる傾向の

このコースですが、各陣営、対応が分かれています。

 

KTMザクセンでは外していたミドルウィングを再び装着、

いわゆるダウンフォースを付け気味のセッティング。

ガードナー以外はこのセットで走りました。

スズキはリンスが新しいウィングレットを装着。形状的にこちらの方がダウンフォースが軽いセットアップのようです。

ミルは一度も使わず。

ホンダもアレックス・マルケスが前回同様、小型のウィングレットで走っています。

アプリリアはアレイシが前回使わなかったサイドカウルが膨らんだ形状のものを

今回は使っています。

どうやら寝ている時間が長いザクセンだとカーボン製のクラッチが上手く冷えない恐れがある

という理由であえて旧型のカウルで走ったみたいですね。

 

タイヤチョイスに目を転じると、猛烈な熱波に見舞われているヨーロッパでしたが

アッセンの週末は比較的涼しいため、タイヤの消耗を重視したというよりは

セットアップとのバランスに重点を置いたタイヤチョイスとなっているようです。

特にペッコ、ミラー、マリー二、ディジャの4人はフロントにソフトをチョイス

それ以外のライダーは全員ミディアム。

あれだけダウンフォースの大きそうなウィングを使っているのに、フロントにソフトを

履くのがドゥカティの傾向ですね。

ただ使いこなせるこなせないがあるようですが・・・。

この辺りがフロントとリヤのタイヤのグリップバランス、ダウンフォース

クラッチエンジンブレーキとの絡み、ライドハイトアジャスターの使い方なんかの

総合的なセットアップというこおになるでしょうか。

一方、リヤはホンダの3人、ザルコ、ミラー、べッセッキなどがソフトを選んでいますね。

注目はやはり、ホンダ勢が3人ともリヤにソフトを選んでいる点。

今期はとにかくトラクションに問題を抱えるホンダ。

リヤタイヤを使えるようにマシンを大きく変えたのに、上手く使えないのでは

本末転倒です。

熱いコンディションではリヤにソフトが履けないために、有効なトラクションが得られない状態が続いていたが、涼しいコンディションならば決勝でもリヤにソフトを

履けるから、これまでよりは幾分、マシになるかも知れません。

今回はそれ以外の陣営は全員リヤにハードをチョイス。

面白いのは一人もミディアムが居なかったこと。

 

今回の注目は予選で速さをみせたKTMワークスの2人。

予選で使うリヤソフトが使いこなせず、予選で低迷、決勝で追い上げというのが

ここ数戦でしたが、今回は予選でも速さをみせて、Q1を1-2通過。

カタルニアテスト後も着実にセットアップが改善されて、それが結果にも繋がっているようですね。

 

逆にホンダは中上君以外は低迷、その中上君をもってしても予選では思うように

タイムを出せず、Q2最下位となりました。

決勝でも中上君はリヤソフトを履いてますから、決勝を見越したソフトタイヤの

使いこなしは出来たけど、予選でのソフトタイヤのグリップを引き出すことは出来なかった模様。

あちらを立てればこちらが立たずという感じでセットアップのいいと所がまだ見つかっていない模様ですね。

 

決勝ではファビオが珍しく判断ミスして、アレイシに激突。その後リタイアとなりますが

次戦のイギリスではロングラップペナルティが課されることとなりました。

 

またビニャーレスがアプリリア移籍後、初の表彰台。

彼は元々アッセンのようにあまりハードにブレーキをかけてしっかり減速しない

ダラダラとコーナーが続くコースが得意なんですよね。

前回の表彰台も一年前のここでした。

だから、コースとの相性の良さを考えると、この表彰台だけでアプリリアとの

マッチングが良くなったかどうか判断するのは時期早々。

 

ヤマハはファビオがリタイアしたことで、1989年のイタリアGP

ワークス勢が全員ボイコットしたミザーノ以来のノーポイントレースと

なってしまいました。(ホンダはサテライトのキリが走ってノーポイントを免れた)

まあ、今年の成績を見ていると、ファビオがリタイアしたらそうなるだろうなあと

いう予感はしてましたが・・・。

モルビデリのコメントを聞く限り、今のマシンは積極的に走らないとタイヤの

グリップを引き出せないようです。

確か数年前までは、タイヤのオーバーヒートに悩まされて、スムーズにスムーズに

走らせることで、結果を残していたはずですから、ここ数年でマシンのキャラクターが

かなり変わっているようですね。

モルビデリもそのマシンのキャラクターの変化に合わせて乗り方を変えないと結果は

残せないと言っています。

ファビオに合わせたマシンのキャラクター変更ということでしょう。

モルビデリは去年の途中までずっと旧型に乗ってましたから3年分の変化についていけていないようです。

ファビオは2020年以降、最新型に常に乗ってますからね。

 

また日曜日にはアレックス・マルケスがグレシー二入りを発表しました。

当初はミゲール・オリベイラがここに座ると言われていましたが、ドゥカティ

27歳と、もう若くないオリベイラにノーを突き付けたようです。

こうなるとオリベイラはRNFアプリリアか、テック3KTMか?ですね。

テック3KTMはポル、レミーオリベイラの誰を選ぶのでしょうか。

 

ホンダ的には離脱する事が決まっているポルとアレマルに来期先行型をテストさせるわけ

ありませんから、そのお鉢は中上君に回ってくることになるんでしょうね。

その中上君の去就も夏休みに決まると言われています。

 

それからVR46のMOTO2部門が無くなるのはほぼ確定のようで、その場合、

ビエッティはVR46アカデミー・ヤマハに移籍すると言われています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれがああなって、これがああなって・・・

例年より複雑を極めるMOTOGPストーブリーグですが、

前半戦最後のオランダを迎えて、ようやくぼんやりとですが

状況が整理されてきたようです。

 

そのキーを握る重要人物の一人、ミゲール・オリベイラ

KTMのテック3降格を蹴って、飛び出したオリベイラでしたが

いざ、実際に就職活動を行ってみると、彼の思ったような条件に

見合う所は少なかったようです。

最初の本命だった、グレシー二・ドゥカティドゥカティサイドの

若手では無いライダーは歓迎しないという姿勢の前にあえなく消滅。

現在のドゥカティは20代前半のライダー(ザルコは除く)が大半を占めており

27歳のオリベイラはノーウェルカムだったようです。

続いて、彼が注目したのが来期からアプリリアを走らせるラズラン・ラザーリ率いる

RNFレーシング。

ところがここは資金難に喘いでいて、オリベイラに出せるサラリーは50万ユーロ

とのこと。

オリベイラ的にはこれが引っかかっているのと、マシンが型落ちになるのが気に入らない模様。

そうなると、一旦蹴った、テック3KTMが再浮上してきている状況。

テック3ならば、サラリーはその倍、もらえて、マシンは最新スペック、乗りなれたRC16。

屈辱を受け入れても、それに対するリザルトという見返りは手にできそうな状況です。

果たして、彼はアプリリアKTMどちらを選ぶことになるのでしょうか?

 

一方、他陣営に先駆けて、いち早く将来を決めそうなのはアレックス・マルケスです。

既にLCRホンダがアレックス・リンスと交渉していることはドイツの時点で判明していましたが

むしろ、自分から飛び出して、オリベイラの一件で空きシートになったグレシー二・ドゥカティ

シートを得ることになりそうです。

現状、最も戦闘力が高いと思われるマシンに乗れるなら移籍しますよね。

 

スズキの撤退で、シートを失うミルとリンスは既にホンダ陣営に加わることが

既定路線のように言われていて、ミルがレプソル・ホンダ、リンスがLCRホンダに

加わると言われています。

ホンダは結構、広範囲に声をかけているようで、ペドロ・アコスタも誘いが

あったことを明かしています。彼はMOTO2残留を選びました。

戦闘力の改善が目下の急務であるホンダはエースのマルク以外の3人のライダーを

全て入れ替えるという荒療治を行うことになりそうです。

(イデミツは中上君に替えて小椋君と言われてます)

中上君はワイルドカード参戦も含めた開発ライダーの任に回されるのか・・・。

 

そして血も涙もない移籍劇を展開中なのがKTMで、育成路線で上がってきたルーキー、

去年のMOTO2ランキング1-2のレミー・ガードナーとラウル・フェルナンデスは共にテック3を放り出されそうな状況です。

KTM陣営からすれば「期待外れ」というわけのようです。

今のところはレプソル・ホンダからKTM陣営に復帰すると言われるポルがテック3に来れば、ラウルが放出。

前述のオリベイラも来るようなら、レミーも放出と言われています。

もっとも、ラウルは放り出された場合、RNFアプリリアに加入できそうですけどね。

レミーは・・・・。

 

シートが2つ減って、更に狭き門となった今のMOTOGP

戦闘力があるマシンに乗りたい、サラリーもとなると、一筋縄ではいかないようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドイツGP あれやこれ

MOTOGPドイツGPでのあれやこれや。

 

前回のカタルニアGP後に行われたテストで試したものも

持ち込まれたようですね。

 

ホンダのアレックス・マルケスは新しいウィング。

KTMはラウルとビンダーがサイドウィングを取り外して走りました。

アプリリアはサイドカウルが膨らんだ新形状のカウルを投入。

また、ビニャーレスは自動式のライドハイトデバイスを使ってましたが

これが壊れて車高が落ちました。

自動式もOKなんですね。どういう規定なんだろう???

 

また、ミシュランが明らかにした再加熱タイヤの存在。

再加熱タイヤとは既に別のコースで持ち込まれて一旦

ウォーマーで加熱されながらも結局未使用に終わったタイヤを

再び、持ってくるということ。

タイヤはバーコード管理されてますから、最初に供給された

ライダーの手元に再供給されるそうです。

が、確か一旦加熱したタイヤは冷まして再加熱しても、元の

性能は出ないんじゃなかったっけ??

今回アレイシは決勝で走りだしてすぐにこのタイヤはダメだと

気がついたそうだけど、ひょっとして再加熱タイヤを履いちゃったか?

タイヤは本数制限があるから、嫌が応でも本数が足りなければ再加熱でも

使わざるを得ないからね。

ムジェロのミラーもそうでしたね。

 

それからフォンシ・ニエトが明らかにしたところによると、

来期VR46はMOTO2チームを持たない可能性が大きいようだ。

その場合、ビエッティとアントネッリはシートを失うことになる。

ビエッティはアプリリアのサテライトと交渉中。

 

 

 

抜けないMOTOGP

カタルニアでは1コーナーのブレーキングでフロントを

ロックさせ転倒、バグナイアとリンスを巻き込んでしまい

一躍、時の人になってしまった中上君でしたが、

その後のインタビューで当時の状況がわかってきました。

 

彼曰く、1コーナーに飛び込むまではブレーキングは完全にコントロール下に

あったそうです。

しかし、ブレーキングしながら前車(この場合はバグナイア)に接近すると

一種のスリップストリームに入ったような状況で、止まり切ることが出来なくなり

ブレーキをロックさせてしまった。ということのようですね。

 

スタート直後とはいえ、今のMOTOGPマシンの動力性能だとカタルニアのストレートなら

1コーナー到達時点で200㎞/h近く出ていたと思いますが、それ以上に深刻なのは

車体の後方に真空地帯が出来ていることですね。

その分、空気密度が下がりますから、ライダーが思った以上に車体が止まってくれない。

だから、追突を回避するためにブレーキをより強く握ったらロックしてしまった

というところでしょうか?

今のMOTOGPマシンは全てウィングレットと呼ばれる空力付加物が装着されていますが

これがあるために、車体後方の真空エリアが大きくなっていて、それがためにブレーキングで接近するのが困難になっている状況のようです。

また、これの弊害として、クオルタラーロが言ってますが、フロントタイヤに空気が

当たらなくなるため、フロントの温度が上がってタイヤプレッシャーが高まり、ブレーキングで

攻め込めないそうですね。

彼の勝ちパターンが独走が多いのは自分のラインが取れないというだけじゃなく、

他車の後方に入ってしまうと、得意のブレーキングが封じられてしまうという背景もあるようです。

 

ここ最近のMOTOGPはラップタイムが接近し、マシン性能が拮抗しているため、追い抜き自体が減っていますが、今の空力付加物が多く付いたMOTOGPマシンは更にこの追い抜きの減少に拍車をかける形になっているように思います。

WSBのようなクロスラインでも抜き差しのやり取りはまず、見られないですよね。

 

段々と高速ツーリングと化してきつつある今のMOTOGP

見直すにはレギュレーションの改定が必要だと思いますが、今のところDORNAはその考えはないようで、今のメーカーとの契約が切れる2026年までは大きな変更を加えることは考えていないと、先日発表したばかりですね。

 

抜けないMOTOGPはまだしばらく続くことになりそうです。

 

なるか11年ぶりのタイトル

 かつてはWSBで圧倒的な隆盛を誇ったドゥカティも現在は2011年のカルロス・チェカ以来タイトルからは遠ざかっています。

 しかし、今期は、第4戦を終えた時点で、アルバイット・ドゥカティのアルバロ・バウティスタがランキング2位のカワサキジョナサン・レイに対して36ポイントのリードを

築いており、タイトル争いをリードする形になっています。

 

 注目すべきはその勝ち方、レースの内容で、かつて開幕戦から圧倒的な速さを武器に

勝ちまくった2019年とは全然違うんですよね。

 

 2019年のV4パニガーレ+バウティスタのコンビは開幕から16連勝(SPレース含む)を飾りましたが、勝ちパターンはロケットスタートから飛び出して、早い段階で後続に

マージンを築くと、後半はそのマージンをコントロールしながらの戦い方となっていました。

これだとレース前半でマージンを築けた時はいいけど、築けなかった場合あるいは

後半追いつかれてしまうと脆くって、実際、第5戦以降はカワサキのレイにキャッチアップされるレースが増えて、最終的には逆転でタイトルを許すことになりました。

 

 ところが今季、ここまでの戦いぶりを見ると、スタートから飛び出すというよりは

むしろ、スタート直後は2,3番手に位置して、そこから上位に進出し、トップに立つと、そこから更に突き放すという強いレース運びが目に付きます。

 

 これはドゥカティ陣営が完全にゴールまでペースを維持できるようタイヤを完全にマネージメントしているから出来る戦い方だと思っています。

 

 WSBの場合、とにかくワンメイクタイヤであるピレリタイヤをいかに使いこなすかが

タイトルのカギになってきますし、最大のライバルであるカワサキ+レイは

このピレリタイヤの使い方が抜群に上手く、それが何度もタイトルを獲得してきた要因でしょう。

 

 その点、これまでのV4パニガーレは圧倒的な動力性能を見せて、予選のような一周の速さは見せるものの、レースでのタイヤの使いこなしという面でカワサキほどの安定感に欠けていて、レース終盤までタイヤが持たないというレースが去年まではしばしば見受けられました。

 そのパワフルなエンジンパワーを路面に伝達するためにはハード目のタイヤじゃダメで、

ソフト目のタイヤを履かざるを得なくって、

そのためにレースではタイヤが持たないという悪循環にハマってしまっていたようにも思えます。

 

 今年、4年目となったV4パニガーレはノーマルの外見から大きく変更をしない

というスーパーバイクのレギュレーションに沿って、その範囲内で大きくタイヤにマッチする方向でマシンを改良してきた感じですね。

 特にリヤのトラクションの改善に力を注いできたようです。

具体的にはシート下の燃料タンクの増大、それに伴う表に出ているタンクカバーの

小型化、リヤスイングアームの改良でしょうか。

今年のバウティスタのタイヤチョイスを見ていると、ライバルよりもソフト目の

タイヤを選ぶことはなく、むしろライバルであるレイなんかと同じタイヤを

選んでいて、それでいて速く、かつレースできっちり持たせることが出来るパターンが

多くなりましたね。

これはリヤのトラクションが良くなった結果、ソフト目のタイヤを選ばなくても

有り余るパワーを有効に路面に伝えられる、かつ、スピニングが減ったから

タイヤの消耗も抑えられるようになったと見ていいでしょう。

 

第4戦ミザーノの決勝当日は非常に気温が上がり、日照も強く路面温度が高い状況でしたが、ドゥカティ陣営はライバルよりもやや固めのタイヤを選んだようでしたが(SCXのBタイヤ)

きっちりと速さを発揮しつつ、タイヤの持ちをコントロールしきって、メインレースを

2つ共に取りました。非常に強い勝ち方でしたね。

4戦、アラゴン、アッセン、エストリル、ミザーノとキャラクターも気温も違う

4種類のコースで万遍なく速さ、強さを発揮できたところを見ると、今期、今後走るどのサーキットでもこの速さ、強さを維持できるのではないかと思います。

 

それにしても、V4パニガーレデビューからの4年間のマシンの変遷を見ると、

その凄まじい改良のペースというか、資金のつぎ込みぶり、力の入れ方に、日本メーカーとの差を感じます。

この辺り、いかにもレースの成績に全振りの会社の姿勢の表れとみていいでしょう。

(親会社のアウディからのプレッシャーもあるんでしょうけど)

 

 

果たして、今年はドゥカティ悲願の、収穫の秋となるでしょうか?

 

 

 

 

V4勢の悲喜こもごも

今シーズン、大幅にマシンコンセプトを見直したホンダですが、

ここまでの成績を見る限り、ニューコンセプトのマシン作りは

失敗に終わったようですね。

ただ、そのホンダを横目にKTMも結構失敗しているようで・・・。

どちらのメーカーも今のミシュランのタイヤに合わせてマシン作りを

見直した結果、失敗したというところでしょうか?

 

 事の起こりは2020年、ミシュランが新しいリヤタイヤを投入したことに

始まります。

 この新しいリヤタイヤはそれまでのタイヤよりもグリップが上がっていて

それによって、前後のタイヤのグリップバランスが変わりました。

面白いのは、このニューリヤタイヤ投入以降、直4マシンであるヤマハ

スズキが急激に好調になったことですね。

リヤのグリップが強くなったことで、直4のマシンのバランスにマッチしたのが

原因だったようです。

 それまでの数シーズンはもはやV4エンジンでないと勝てないとまで

言われるくらい、圧倒的にV4のマシンが速く強かったわけですが、

逆に従来のタイヤのグリップバランスとベストマッチすぎて

新しいタイヤにマシンバランスが合わなかったようですね。

このあたりはドゥカティの関係者が証言しています。

2020年、ホンダは未勝利、ドゥカティはわずか2勝に終わっています。

 

 しかし、面白いのは翌2021年シーズン、ホンダとドゥカティの成績が

はっきりと明暗わかれたこと。

早くもこの新しいリヤタイヤに対応してきたドゥカティに対して、

ホンダは変わらず苦戦することとなります。

 

 実はドゥカティはフレームナンバーから判別すると、フレームに関しては

2020年から2022年までずっと同じ仕様のまま、使い続けているようなんですよね。

つまり、ドゥカティはフレームなどをいじることなく、タイヤに対応してみせた。

恐らく2021年に登場したリヤのライドハイトシステム通称シェイプシフターを

モノにしたことが結果的にミシュランの新しいリヤタイヤを有効に使いこなすことが出来た要因ではないでしょうか?

リヤのグリップの強いタイヤを強く押し付ける仕組みで対応してみせた。

 

 一方のホンダはエースのマルクが万全ではないという事情もあって、2021年はシーズンわずか2勝。

 この結果を受けて、マシンの開発の方向性をより、リヤタイヤを上手に使える方向へと

転換することになります。

 恐らくですが、2022年型マシンは重量配分をやや後ろ寄りにして、フロントの荷重を減らす方向にして、フレームをよりしなやかにして、リヤタイヤをしっかりとしっとりと路面に押し付ける方向へと舵を切ったようですね。

 しかし、結果論からいえば、この方針転換はここまでのところ失敗していて

ライダーからは、フロントタイヤのグリップが感じられない、旋回性が低いという

コメントが聞かれ、しかもリヤタイヤの影響度合いが増したことで、リヤタイヤの

性能を発揮できなかった時の成績の落ち込みが大きいというネガがはっきりしました。

 

 面白いのは、今年のKTMに乗るライダーからも同じようにフロントタイヤの

接地感が薄く存在感が感じられないというコメントが聞かれることです。

今年のKTMは大きくマシンを変えてきたんですが、どうやらホンダと同じ方向で

マシンを変えてきたようですね。

そして同じような失敗をしている。

ルーキーの2人、ラウルとレミーが全く精彩を欠いているのは、MOTO2で使うダンロップに比べて接地感の薄いミシュランの特性に加えて、今年のマシンのこの問題が

大きく影響しているのかも知れないですね。

 

 KTMもその失敗は気が付いていて、カタルニアテストではディメンション変更できるフレームを投入してきて、ジオメトリーの最適値を探そうと躍起になっているようです。

 

来期に向けて、ホンダとKTMは大きな宿題を抱えているような状態ですね。

 

そして、今のところ、実は一番今のミシュランに対応できていると思われるのが

アプリリアです。

実は、今の90度エンジンになって車体を一新したのが2020年で、ちょうどミシュラン

新しいリヤタイヤを投入した年なんですよね。

つまり、最初からこのマシンに合わせてイチからマシンを作ることが出来た。

実際、今年の成績を見ても、タイヤのパフォーマンスによる成績のアップダウンが

小さく、一番安定しているといっていいでしょう。

路面のグリップが低いと言われるカタルニアでの快走もそれを裏付けていると思います。

 

2020年に投入したミシュランのニューリヤタイヤはMOTOGPの勢力図に大きな影響を与えたわけですが、ミシュランは来期、新しいフロントタイヤの投入を予定していると

予告しています。

このタイヤの投入が再び、勢力図を揺るがすことになるかも知れません。

 

どのメーカーもこのフランス製のガラスのように繊細なタイヤに振り回されている・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

KTMの悩みは深く

カタルニアGPで出場した全チーム、ライダーの中でKTMの4人のライダーだけが

全員フロントにハードタイヤをチョイスしていました。

今季ここまで大雨のインドネシアオリベイラが勝ったものの

それ以外は優勝争いに絡む位置で走れていないKTMですが、このタイヤチョイスに

苦悩ぶりが伺えます。

 

KTMのルーキー2人、レミー・ガードナーとラウル・フェルナンデスの

コメントを読むと、とにかく今年のマシンはフロントタイヤのフィーリングが伝わってこないようですね。

それが2人の低迷ぶりにも繋がっているようですが、特にフロントを重視するスタイルの

ラウルには悪影響が大きいようです。

安心してフロントから攻め込んでいけない。

 

元々、KTMは過去に優勝したレースはフロントにハードタイヤを履いていた

場合が多く、フロントに固いタイヤを履いて、フロントから攻め込むマシン作りで

戦ってきましたし、それが強みでもありました。

オリベイラが母国で優勝を飾った2020年の最終戦は前後共にハードタイヤを履いていました。

しかし、昨今のミシュランのタイヤのバランスを考慮して、

リヤタイヤを重視して、前後の重量配分をややリヤ寄りに移した結果、

それまでのマシンの良さが消えて、いい部分が全く無くなってしまったという感じのようですね。

このあたりは今年、大幅にマシンコンセプトを見直してきたホンダにも通じる問題が

あるように思います。

 

カタルニアでのフロントハードチョイスは、その辺の低迷から抜け出すための

苦肉の策とみてもよさそうです。

多分、現行マシンで出来うる限り目いっぱい、重量配分を前に移してみたという

ところでしょうか?

 

その後のカタルニアのテストではスイングアームピボットを前後上下に可変出来る

フレームを投入してますから、もうマシンのディメンションから見直さないとならないレベルで今年のマシンは迷路にハマってしまっていると見ても良さそうです。

 

ホンダの低迷もそうですが、それまで得意とするハンドリングコンセプトを

捨てて、不得意な領域を克服しようとするのは、非常に難産であるということを

KTMは今、痛感しているかも知れません。