2021年のMOTOGPの戦い方

今シーズンもコロナの影響下でシーズンを戦わないとならない

状況になりそうなMOTOGPですが、そうなってくるとこれまでのような

開発体制は難しくなりそうです。

 

だからでしょうか、ホンダは国内での開発ライダーとして

長島哲太選手とテスト契約を結んだそうですね。

 

つまり、これまでのように国内で開発選定したものを

海外に送付し、海外の拠点、ライダーがサーキットで最終テスト

そして本番に投入というやり方が難しくなりそうであると。

だから、国内でしっかり開発をして、それを直接本番に投入、

海外のテストというワンクッションを入れるやり方はウェイトが

低くなりそうですね。

 

この辺は日本という地理的要素のあるメーカーに限った条件で

欧州に拠点を置くメーカーには関係のない問題だと思いますが。

 

MOTOGPはとにかくシーズン中も日本、欧州でどんどんテストをして

マシンがアップデイトされながら戦っていくカテゴリーでしたが

そのアップデイトの速度はやや遅くなるかも知れませんね。

そうなってくると、最初にシェイクダウンするマシンの素性が

凄く重要になってくるとも言えるかも知れません。

以前のようにシーズン中に開発を進めて巻き返すというのは

難しくなってきそうです。

いずれにせよ、国内テストのウェイトが大きくなっていくのは

間違いないところ。

 

そう考えると、野左根君がWSB参戦を決めたとはいえ、中須賀選手という

絶対的な存在の居るヤマハ、開発も長い津田君が居るスズキに比べると

ホンダは国内テストライダーが手薄な状態です。

ホンダは水野涼選手がBSBに参戦するということでイギリスに行ってしまうので

去年までのようにじっくり国内で腰を据えて開発することは出来ませんから

その後釜を務める開発ライダーの捜索は急務で、長島選手はまさにうってつけ

だったんでしょうね。

 

加えてホンダ的にはMOTOGPに次いで重要な位置づけである鈴鹿8耐向けの

耐久レーサーの熟成も重要な仕事で、こちらも長島選手は任されそうです。

過去に伊藤真一さんなんかもテストライダーという経験を経ることで

ライダーとして一回り成長したように、長島選手にとっても貴重な経験に

なると思います。

答え合わせは突然に

マレーシアのロックダウンによって

2月中旬に予定されていたセパンサーキットでのテストが中止となり

代替えとして噂されていたスペイン、ヘレスでのテストも無くなり、

今シーズンのMOTOGPは開幕戦の舞台であるカタールでの

直前テストのみがオフテストとなることになりました。

 

これはある程度、予想されていたこととはいえ、メーカーサイドから

すれば、やや計算が狂ったというところでしょうか?

 

というのも例年であれば、セパンテストに仕様を微妙に変えた

2種類のマシンを持ち込んで、本番ライダーにテストさせ

そのシーズンに使う車両の最終仕様を選ばせて、そこからはその車両で

ひたすら走り込みをして、ベースセッティング出しをして

開幕戦に備えるというのがパターンだったからです。

これは逆に言うと、セパンテストの結果が良くなくても、カタールまでに

立て直す時間的マージンが若干、残されていることを意味していて

今年のようにカタールテスト終了後、マシンも関係者もそのままカタール

残留して、開幕戦を迎えるというのはかつて無かったケースとなります。

 

つまり、テストに向けて日本をあるいはヨーロッパを出た時点で

それはもう手を加えることは出来ず、そのままオフの開発の答え合わせが

まんま開幕戦に表れるということを意味しています。

 

もちろん、例年と異なり、2020年から2021年にかけてはエンジンとエアロ関連の

開発は凍結され、シャシーの開発のみが許されている分野ですが、

それでも去年大きく影響してミシュランのリヤタイヤに対してのシャシーの改良は

避けて通れない課題ですから、それぞれのメーカーがどんな物を出してくるのか。

 

テストの結果が開幕戦、ひいてはシーズンの流れを決する形になりそうですね。

 

ちなみに去年のセパンテストではマルクは一度もトップタイムをマークできず

最終的に5番手で転倒を喫し、中上君の旧型マシンを引っ張り出したんですよね。

今に思えば不吉なシーズンの幕開けに相応しい流れでした。

って多分、当時Twitterに書いたはず。

金の切れ目が縁の切れ目?

今年に入ってから相次いで、GPライダーの装具メーカーとの

契約情報が流れていますが、新しくロレンツォ・バルダッサーリが今季から

ヘルメットをagvからHJCに変更することが発表されました。

 

これでagvはポル・エスパルガロ、ホルヘ・マルティンに続いて

3人目の離脱者が出た格好になりました。

 

コロナ渦でどのメーカーも台所事情が苦しいですから

契約金を多く出すメーカーにスイッチするというのも

ひとつの傾向かも知れませんね。

agvはロッシとミールの2枚看板がメインかな。あとミラー。

 

特にHJCはカル・クラッチロウの引退によって、最高峰クラスの

ユーザーが居なくなりましたから、ポルはどうしても欲しくて

それなりに積んだのかも知れないですね。

マルティンはシャークと契約)

 

この辺は欧州のライダーは割かしドライというか割り切っている感じがします。

被り心地で選んでいるライダーも居るとは思いますが・・・・。

 

それとイタリアンライダーというかVR46一派はagvにダイネーゼという

お揃いコーデでしたが、バグナイアを初め、それも崩れつつあるのかなと。

 

ちなみに現段階での情報に基づく最高峰クラスのヘルメットメーカーと

ライダーの契約状況は以下になっています。

 

アライ:ビニャーレス、中上

ショーエイ:マルク&アレックス・マルケス

agv :ロッシ、ミール、ミラー、モルビデリ、マリーニ

シャーク:マルティンオリベイラ、レコーナ、ザルコ

スオーミー:バグナイア、バスチアニーニ

ノーラン:ペトルッチ、リンス

HJC   :ポル・エスパルガロ、ビンダー

KYT   :アレイシ・エスパルガロ

スコーピオン:クオルタラーロ

 

 

 

狂った計画

2020年限りでドゥカティファクトリーを去った

アンドレア・ドヴィジオーゾが告白した内容によれば

ホルヘ・ロレンツォが加入した2017年以降、技術責任者の

ジジ・ダリーニャとマシンの開発について打ち合わせを行ったことは

無かったとのこと。

それはつまり、2017年にロレンツォが加入した段階から

ジジさん的にはロレンツォを中心に据えてマシンを開発していく方向に

方針を固めていたということになりますね。

 

それだけにロレンツォがわずか2年でチームを解雇されてしまったのは

ジジさんにとっては、まさに晴天の霹靂だったというところでしょうか。

(実際には2018年の頭の段階で解雇が決まった)

 

一説にはロレンツォ解雇の要因は、当時のMOTOGPライダーとしては破格の

12億円という契約金額で契約したにも関わらず、一年目にタイトル争いはおろか

優勝さえも出来なかったことで、スポンサー(アウディマールボロつまりフィリップモリス)が激怒し、早々に解雇を決定したと言われています。

 

ただ、これは現場のジジさんからすれば、理由があって、彼は移籍一年目は

ライダーのリクエストに応えることをしないんですね。

まず、現状のマシンに一年間載せて、データを揃えたところで、二年目から具体的に

動き出すのが、彼のやり方。

これはかつて、ジジさん在籍時のアプリリアにビアッジを解雇して、

原田哲也さんを迎え入れた97年シーズンと全く同じパターンで、

原田さんも一年目は全くフレームを改良してもらえなかったと言っています、

そして二年目にリクエストを反映したニューフレームを投入して

原田さんはタイトル争いに絡んでいくことになりました。

だから、ジジさんからすれば、ロレンツォが移籍してきた2017年シーズンはまだまだ

データを収集している段階で、本領発揮は2018年からと思っていた。

だから2017年の成績だけで判断してもらっては困るというのが本音でしょう。

 

実際、ホルヘの離脱が決まった後のジジさん、

ホルヘのコメントを思い返してみても2人の信頼関係には全く亀裂は生じておらず、

むしろ別れを惜しんでいるかのようでしたから

ホルヘの解雇劇にはジジさんは関与していない、彼の意思の届かないところで

決定していたことがわかりますね。

 

ただ、ジジさんからすれば、開発の主軸を失ってしまったわけですから、

それ以降の2シーズンはドヴィがランキング2位になったりしたものの

それは結果論であって、内容的には完敗だったと言えるでしょう。

 

だからでしょうか、2019年のオフシーズン、

KTMをクビになってフリーになっていたヨハン・ザルコの獲得に

ジジさんはかなり積極的に乗り出してきたんですよね。

結果的に、本来契約は残っていたカレル・アブラハムを押し出して、

ファクトリーのスタッフもセットでアヴィンティアに押し込むという強引とも

言えるやり方でザルコを獲得しました。

これ、当時もそこまで執着するほどのことかな?とやや疑問に思っていましたけど

ロレンツォが離脱した状況で、ロレンツォを主軸に据えて開発したマシンを

仕上げるのに、当時のライダーの中でザルコが一番適任であり、どうしても

彼が欲しかったと考えると合点が行く部分が多いです。

 

こうして見ていくと、ドゥカティは現場で指揮を取るジジさんと、彼以外の

首脳陣、社長だったりスポンサーとの意識のズレがあるなと思います。

特にドゥカティのように必ずしも企業規模がホンダやヤマハほど大きくない

メーカーの場合、フル参戦するにおいて、スポンサーマネーは必須で

そのスポンサーの意向にライダーラインナップが大きく左右される弊害が

出てしまっているように感じます。

 

そこを改善出来ない限りは、タイトルは難しいのではないかな・・・・。

 

勝つための体制

ここに来てようやく、チャズ・デイビスのゴーイレブン・ドゥカティ入りが

正式に発表されました。

常日頃からワークス体制以外では走らないし、自分にはその資格があると

公言しているチャズ・デイビスですから、このワークス放出

サテライトチームで走ることに対して受け入れるまで時間がかかったことだと思います。

 

ところで、今回のデイビス入りですが、今年のシーズンが終わった後から

スコット・レディングがずっと公言していますが、彼のタイトル獲得には

デイビスの存在が不可欠だと言うんですよね。

そのレディングの猛プッシュも影にあったんじゃないかというのが想像されるところ。

恐らくはデイビスサテライトチームにいながら、ワークスとほぼ同じマシン

体制を用意されているんじゃないでしょうか?

 

というのも、来季、レディングのチームメイトになるマイケル・ルーベン・リナルディは

レディングよりかなり身長が小さく小柄で体重の軽いライダー。

彼は決勝レースでもSPレース用のソフトコンパウンドを履いて最後まで持たせる

芸当ができるくらい体重が軽く、タイヤに優しいライダーです。

一方、レディングは身長も高いうえに、体重が非常に重いライダーですから

リナルディのデータは全く彼の役にたたないんですね。

対して、デイビスはレディングに身長、体重共に近く、彼のセットアップデータ

タイヤチョイスは非常に参考になります。

来季、ドゥカティがレディングにタイトルを獲得させるのであれば

サポート的な存在として、デイビスは必須の存在で、そのためにはサテライトに所属させて

レディングと同じワークスマシンを与えるのが一番です。

 

レディングがセットアップに迷っても、デイビスが好走しているなら

彼のセットアップをコピーすればいいわけです。

 

それにしても、リナルディでさえ、ゴーイレブン残留を望んでいたのにそれを

無視して、彼をワークスチームに抜擢し、デイビスを放り出したのは誰の

意思だったんでしょう?

結果的にデイビスはワークスから放り出されて、ワークスとほぼ同じ体制の

サテライトで走ることになり、ただただライダーの気分を害しただけにしか

思えない部分もありますね。

まあ、アルバイットの社長がリナルディにゾッコンとは聞いておりますが・・・。

ヤマハに何が起こったのか

シーズン終盤を迎えて驚天動地の出来事となった

ヤマハへのペナルティ。

これについて、ヤマハMOTOGPチームの監督であるリン・ジャービス

ヤマハ内部に起こった一連のペナルティに繋がった

出来事について、説明しています。

 

事の発端は昨年の中盤、今季使用するエンジンの仕様が固まり

各パーツサプライヤーへの発注を終えた段階でバルブ製作メーカーから

これ以上の製作は出来なくなる可能性があるという打診を受けたことから

だったようです。

当然、ヤマハはこの従来のサプライヤーに代わるサプライヤーを探し

こちらにもバルブを全く同じ仕様で作るよう発注しました。

 

仮に元々のメーカーをA社、新しいメーカーをB社とすると

ある段階で、ヤマハにはA社とB社のバルブが存在していたことになります。

 

2020年シーズンが始まる前、ヤマハはメーカーとしてそのシーズン使用する

エンジンはこれですと標準エンジンを提示する義務があるのですが、

これに搭載されていたバルブはA社のものでした。

 

一方、実際にレースで使用することになったエンジンにはA社とB社のバルブが

混在して搭載されており、この段階でヤマハとしてはバルブのメーカーが違っても

下請けに発注している仕様が同一で、これは同一製品とみなして問題なし

という判断を下したようですね。

あるいは、このまま、何も起きなければこの問題は日の目を見ることなく、

公然にさらされることは無かったかもしれません。

 

ところが、実際はそうはならず、このB社のバルブを搭載したエンジンが

MOTOGPの開幕戦となったヘレスでのスペインGPでトラブルが発生。

原因を調査した結果、B社に発注したバルブに製品不良があったようです。

これを受けて、ヤマハはB社のバルブを正常な製品に交換しようとしたものの

それは規定違反であるといおうことから、引き続き使用。

ただし、破損の恐れがあるため、レブリミットを下げて対応をしたようです。

 

マニュファクチャラー協会に報告書を提出して、認可が得られれば

合法的にエンジンの凍結を解除してバルブを交換できるのに、

それをせず、引っ込めたのは上記の理由だったからとのことです。

 

その辺の一連の出来事が現時点になって、全て調査が終わったということですね。

 

いずれにせよ、ヤマハファンとしては、ものすごく残念な出来事ですね。

FIMがタイトル争いの興を削がないために、ライダーのポイントを剥奪しなかったのは

救いかも知れませんが、これは全ポイント剥奪くらいのインパクトのある出来事。

特にヤマハは慎重すぎるぐらい慎重な社風だけにこれは無いよというところ。

 

この汚点はずっと残ってしまうんだろうな。

2020年シーズンの後味を悪くする出来事。

 

 

秋のヨーロッパとタイヤの関係

ミシュランの公式発表によれば、アラゴンGPから

タイヤアロケーションの登録できる数量を変更するそうです。

 

これはレースウィークが始まる前に、MOTOGPでは

フロント10本、リヤ12本のタイヤを事前登録するのですが

そのフロント10本の内訳の中で、これまでは最大1種類のコンパウンド

5本までしか登録は出来ませんでした。

 

つまり、今のように低い路面温度でソフトを沢山使いたくても

5本までしか登録出来ませんから、予選やレースに向けて新品を

温存すると、残り3本でFP1,2,3、4、WUPをこなさねばならず

特にQ1,2の進出を決めるFP2,3のタイヤの使い方が難しくなりますね。

実際、予選を見ていても2回のアタックのうち、2回目のアタックは

リヤのみ新品で、1回目のアタックで使ったフロントタイヤを

そのまま使うケースが多いですが、これはもう新品ソフトをレースに温存すると

在庫が無いからでしょうね。

 

それとその5本以外に登録できるミディアムであったり、ハードタイヤは

今の状況ではまず、出番はありません。

路面温度が低く、タイヤの作動レンジを外れてしまうため、タイヤが

本来のグリップ性能を発揮することができないからです。

 

実際、カタルニアとルマンではKTMポル・エスパルガロ

ミゲール・オリベイラはフロント側にミディアムを装着しましたが

ポルいわく、全然グリップしなくって、何度もフロントから

転倒しかけたそうです。

嫌が応でもフロントにもソフトを履かざるを得ないのが今の状況。

 

こうした状況を受けて、ミシュランはフロントタイヤ10本に関して

1種類のコンパウドの登録できる数量を6まで増やすとのこと。

これでFP1,2,3,4、予選、レースで使えるソフトタイヤが

一本増えますから、だいぶ、やりくりは楽になることでしょう。

 

リヤに関しては従来から1種類につき最大6本まで登録できますから

何とか、これまでやりくりしてきたようですね。

 

ただ、その結果アラゴン以降のレースはほぼ全メーカー、ライダーが

前後ソフトという組み合わせで戦うしかなくなるわけで、

違う意味での我慢大会というか、タイヤの使い方の争い

という側面が強くなっていきそうですね。

もしも、マルクが居たとしても全然思うように走れる状況じゃ

ないでしょうね。