狂った計画

2020年限りでドゥカティファクトリーを去った

アンドレア・ドヴィジオーゾが告白した内容によれば

ホルヘ・ロレンツォが加入した2017年以降、技術責任者の

ジジ・ダリーニャとマシンの開発について打ち合わせを行ったことは

無かったとのこと。

それはつまり、2017年にロレンツォが加入した段階から

ジジさん的にはロレンツォを中心に据えてマシンを開発していく方向に

方針を固めていたということになりますね。

 

それだけにロレンツォがわずか2年でチームを解雇されてしまったのは

ジジさんにとっては、まさに晴天の霹靂だったというところでしょうか。

(実際には2018年の頭の段階で解雇が決まった)

 

一説にはロレンツォ解雇の要因は、当時のMOTOGPライダーとしては破格の

12億円という契約金額で契約したにも関わらず、一年目にタイトル争いはおろか

優勝さえも出来なかったことで、スポンサー(アウディマールボロつまりフィリップモリス)が激怒し、早々に解雇を決定したと言われています。

 

ただ、これは現場のジジさんからすれば、理由があって、彼は移籍一年目は

ライダーのリクエストに応えることをしないんですね。

まず、現状のマシンに一年間載せて、データを揃えたところで、二年目から具体的に

動き出すのが、彼のやり方。

これはかつて、ジジさん在籍時のアプリリアにビアッジを解雇して、

原田哲也さんを迎え入れた97年シーズンと全く同じパターンで、

原田さんも一年目は全くフレームを改良してもらえなかったと言っています、

そして二年目にリクエストを反映したニューフレームを投入して

原田さんはタイトル争いに絡んでいくことになりました。

だから、ジジさんからすれば、ロレンツォが移籍してきた2017年シーズンはまだまだ

データを収集している段階で、本領発揮は2018年からと思っていた。

だから2017年の成績だけで判断してもらっては困るというのが本音でしょう。

 

実際、ホルヘの離脱が決まった後のジジさん、

ホルヘのコメントを思い返してみても2人の信頼関係には全く亀裂は生じておらず、

むしろ別れを惜しんでいるかのようでしたから

ホルヘの解雇劇にはジジさんは関与していない、彼の意思の届かないところで

決定していたことがわかりますね。

 

ただ、ジジさんからすれば、開発の主軸を失ってしまったわけですから、

それ以降の2シーズンはドヴィがランキング2位になったりしたものの

それは結果論であって、内容的には完敗だったと言えるでしょう。

 

だからでしょうか、2019年のオフシーズン、

KTMをクビになってフリーになっていたヨハン・ザルコの獲得に

ジジさんはかなり積極的に乗り出してきたんですよね。

結果的に、本来契約は残っていたカレル・アブラハムを押し出して、

ファクトリーのスタッフもセットでアヴィンティアに押し込むという強引とも

言えるやり方でザルコを獲得しました。

これ、当時もそこまで執着するほどのことかな?とやや疑問に思っていましたけど

ロレンツォが離脱した状況で、ロレンツォを主軸に据えて開発したマシンを

仕上げるのに、当時のライダーの中でザルコが一番適任であり、どうしても

彼が欲しかったと考えると合点が行く部分が多いです。

 

こうして見ていくと、ドゥカティは現場で指揮を取るジジさんと、彼以外の

首脳陣、社長だったりスポンサーとの意識のズレがあるなと思います。

特にドゥカティのように必ずしも企業規模がホンダやヤマハほど大きくない

メーカーの場合、フル参戦するにおいて、スポンサーマネーは必須で

そのスポンサーの意向にライダーラインナップが大きく左右される弊害が

出てしまっているように感じます。

 

そこを改善出来ない限りは、タイトルは難しいのではないかな・・・・。