もう少し何とかならんかったか

WSBの開幕戦のセッションが今日から始まりました。

FP1はあいにくの雨、FP2はドライ路面で行われ

今年からWSBで走るドゥカティのスコット・レディングが

トップタイムをマークしています。

 

日本人的には青山博一以来のフル参戦ライダーとなる

高橋巧の走りに注目が集まるところですが、晴れとなった

FP2ではレディングから4.5秒遅れの最後尾19番手となっています。

 

今回のフィリップアイランドは開幕戦ということもあって

今週頭の月、火曜日にテストが行われていますが、

ここがマシンのシェイクダウンとなった高橋選手とMIEレーシングは

セッション開始まもなくエンジンブローで走行ストップ。

そこからエンジンの載せ換えをして走り出したのが翌日でしたから

走行量が圧倒的に不足している状況。

ルーキーでこのコースを出来るだけ多く走りたい高橋選手にとっては

スタートから躓く格好になってしまいました。

足回りは電子制御のセットアップは大きく遅れていることでしょう。

また、このセッションでマークした最高速は300km/hに届いておらず

参戦する19台の中で2台しか居ない200km/h台のマシンでエンジンが

明らかに遅いです。

同じホンダのバウティスタと20km/hも差がありますから、彼我の差は歴然。

加えて今日の雨のセッションでは、テールカウル裏側のリヤランプが

外れてぶらつくというシーンも。

 

マシンが遅いだけではなく、マシンの整備もちゃんと出来ないチーム力

なのかな?と疑ってしまいます。

アルティア・レーシングは去年が終わった段階でHRCにメカが

引き抜かれてますから、チーム力が落ちているか。

 

しかし、高橋巧の参戦は単なる参戦ではなく、全日本では中須賀と激戦を繰り広げた

日本のトップライダーの世界への挑戦でもあり、全日本のライダーも関係者も

注目しているところ。

そのライダーが走らせるマシン、チームとしては余りにみすぼらしいのでは無いか。

これではまともに戦う以前の話。

これで実力を発揮しろというのは余りにも無茶な話。

 

今年はテストライダーにドミニク・エガーターを雇うほどの予算があるんだから

ホンダは日本のトップランカーである高橋にもう少しマシな体制、マシンを用意して

あげられなかったのかな?とも思うんですよね。

高橋は変わらずHRCの契約ライダーなわけだし。

正直、ここまで酷い待遇になるとは予想していなかったもので、さすがに

ホンダファンでも何でもない筆者でも意見のひとつも言いたくなった次第です。

 

タイヤに優しく

オーストラリアのフィリップアイランドと言えば

過去にもMOTOGPでレース中のタイヤ交換が義務付けられたり

WSBでは決勝レースの周回数が減算されたりと

とにかく、タイヤに厳しいコース。

これは2015年に全面舗装が施されて、路面グリップが上がったこと

高速コーナーが多く、特にアクセルを開けながら旋回するコーナーが

多く、リヤタイヤに非常に負担がかかるなどが要因として

挙げられると思います。

 

だから、このサーキットで勝つには、他のサーキット以上に

タイヤのケアが重要となってきます。

 

2日間に渡って行われたWSBのテストでは初日に

ヤマハのトプラック・ラズガットリオーグルがトップタイムを

マークしたものの、レースシュミレーションではリヤタイヤが

5周でダメになってしまったとのこと。

この対策として2日目はライディングスタイルを変えたそうですが、

その結果、タイムは落ちています。

これと対照的だったのが初日4番手に終わったジョナサン・レイ

奥の手はあるとコメントしていましたが、2日目になってトプラックを

上回るトップタイムをマークしてきました。

 

初日はとにかくタイヤのレース距離でのライフ確認に終始して

2日目にタイムアタック、さすが王者です。

レイもトプラックよりもむしろ、そのチームメイトである

マイケル・ヴァン・デル・マークを意識しているのは

彼の方がレースシュミレーションが出来ていると見ているからでしょう。

 

果たして、金曜日から始まるレースウィークはどんな結果が

待ち受けているんでしょうか。

 

一蓮托生

一蓮托生

意味:結果がどうなろうとも、行動や運命を共にすること

 

ホンダがマルク・マルケスとの契約を更新しましたが

驚くべきはその契約年数が2年ではなく、倍の4年であるということ。

もはや、この先数年のホンダのMOTOGP活動はマルク・マルケス

一蓮托生であると宣言したようなものです。

 

確かに2013年の最高峰デビュー以来、世界王者を逃したのが

2015年の1度のみで、現役MOTOGPライダーの中で頭2つは

抜きん出ている存在であることは誰もが認める部分はあると思います。

ホンダはGP活動の命運を彼に託すと決めたわけです。

それだけの価値はあると。

 

ただ、これは逆に言うと、非常にリスキーな決断で、

完全にMOTOGP活動、開発がマルク頼み状態であり、万が一

開発に失敗した場合は目も当てられない結果が待ち受けているという

リスクも同時に抱え込んだということ。

 

かつて、2001年にロッシがNSR500で世界王者に輝いたシーズンの

オフにこのマシンに試乗した阿部孝夫さんが、あまりにロッシに特化した

マシン作りに対して、これは非常に危うい兆候だ、ロッシが怪我でもしたら

どうにもなくなると発言しましたが、その状況に近いですね。

 

奇しくも現在、カタール、ロサイルサーキットで行われているテストでは

ホンダ勢はエースのマルクをもってしても苦戦状況で

彼も「この問題がロサイル特有のものであることを願う」と

ネガティブな発言をしている状況です。

彼のセンサーが何らかの異常を察知しているのかも知れませんね。

ホンダとしてはマルクと命運を共にすると決めたわけですから

やるしか無いんでしょうけどね。

ただ、現状、彼のスタイルに特化したマシン作りをしてますから

今のマシンの問題はカルでは解決できないし、ましてやルーキーの

アレックスでは無理、中上君は型落ちマシンですから比較できないし

となると、テストライダーのブラドルになんとかしてもらうしかない。

けど、ブラドルはマルクとはスタイルが全く異なる。

果たして、上手く解決、開発が出来るかどうか・・・・・?

 

一蓮托生ってそういうことなんですよね。 

あれも欲しい、これも欲しい

ホンダがスーパーバイクの開発ライダーとして

ドミニク・エガーターと契約しました。

ホンダはMOTOGPの開発ライダーとしてステファン・ブラドルと

契約してますが、彼は基本的に海外のサーキットでのテストが

中心になりますから、スーパーバイクまでは手がまわらない

ということなんでしょうね。

MOTOeにしか参戦しないエガーターはスケジュールに空きが

ありますから、日本国内のテストには十分参加できることでしょう。

 

つまり、それってやっぱりホンダは今年も鈴鹿8耐を取りに来ている

ということ。

このメーカーにとって、鈴鹿8耐は2輪ロード部門では

MOTOGPに次プライオリティを持っているそうですから。

 

今年、HRCは国内レースへのワークス参戦は取りやめてますから

新型マシンとブリヂストンタイヤとのマッチングは急務。

ハルクプロやケーヒン・ドリーム・レーシングが全日本を走りますが

こちらはキットパーツ車、つまりサスペンションがショーワになる

可能性が高い一方、エガーターが走らせる車両はWSBのワークス同様

オーリンズになる可能性が高いですね。

今年もファクトリー体制で来るヤマハに対して、キットベースの

車両では勝てないでしょう。やはり、ワークススペックで無いと。

エガーターの仕事はワークススペックのCBR-RR-Rをブリヂストン

マッチングさせて勝てるマシンに仕上げることになるでしょう。

 

一方で、並行してWSBを走るピレリタイヤでの車体開発もやるわけですね。

こちらもバウティスタ、ハスラム、高橋から入ってくるコメントを元に

車体の開発を行うことになりそうです。

ヘレスではバウティスタがパーツが多すぎてテストしきれないと

コメントしてましたから、かなりの物量作戦のようで、逆に仕様が

決まらず開幕を迎えてしまっている状況。

早急に道しるべを見つける必要がありますね。

 

ホンダ的にはWSBのタイトルも、鈴鹿8耐も取りたい。

2兎を追って、2兎を捕らえたい。

そういうことなんでしょう。

 

それもひとつの要素

FIMから2020年のWSBにおける

各メーカー車両の最高回転数リミットが発表されました。

Ducati 16.100/min 

Honda 15.600/min 

Yamaha 14.950/min 

MV Agusta 14.950/min 

Suzuki 14.900/min 

BMW 14.900/min 

Aprilia 14.700/min 

Kawasaki 14.600/min

 

相変わらずドゥカティの圧倒的な回転数の高さが目に付きますが

新参のホンダは直列4気筒勢の中でトップなのは

さすがエンジンのホンダが本気で作ったエンジンは違うなという印象です。

去年までの旧型のように優遇されての回転数では無いわけで

実際の量産車両からの算出でのリミット数ですからね。

 

ただ、相変わらず最も低い回転数で押さえつけられているカワサキ

去年圧勝していることから見ても、最高回転数は数ある速さの要素の

中のひとつに過ぎないということを強く印象づけます。

 

これはジョナサン・レイと彼のスタッフの賜物でもありますよね。

彼らは最高回転数のリミットに達する前の加速区間、更にその前の

コーナーリング速度そのものを速めることで、結果的にトータルでの

速さを向上させ、しかもタイヤへの攻撃性を抑えて、レースでも持つと。

このマシン、タイヤ、ライダー、スタッフが結束して高い

バランス実現しているのがここの強さですよね。

マシンが去年から大きく変わってないのも、このバランスが崩れず

今年も継続されることを考えても、今年も優勢か。

 

とはいえ、それが生きるコースとそうでないコースで

成績が別れるのは、去年の開幕戦から4開催未勝利なことでもわかります。

果たしてフィリップアイランドではレイが勝つのか

それとも???

テストのコスト

前の章でようやくヤマハも重い腰を上げて

海外にテストチームを持つことになりました。

と書きましたけど、そもそも何で海外にテストチームを

持たないといけないのか?って話ですよね。

 

だって、ブリヂストンワンメイク時代は日本のメーカーは

日本国内のサーキットと自前のテストコースでのテストだけで

何ら問題は無かったわけですから。

 

これに関しては、日本のメーカーの人も言っているように

ミシュランのタイヤの場合、グリップの高い日本のコースで

テストした結果が、海外の滑りやすいコースではキチンと

反映されないみたいですね。

ですから、より本番のコースに近いコンディションのヨーロッパで

テストを行う必要があると。

それだけミシュランは路面コンディションに過敏に反応するタイヤ

ってことなんでしょうね。

初期にはテスト用に供給されるタイヤと、実際にレースで支給されるタイヤの

スペックが違うなんてこともあったようですが。

 

でも、それが故に各メーカー、わざわざテストチームを作って

ライダー、スタッフと年間契約して、拠点も作って、マシンも余分に作って

テストしないといけないんだから、DORNAの提唱するコストダウンとは

真逆の結果を招いてますね。

これに関してはDORNAは改善をするつもりは無いってことか。

こうなると、ヨーロッパに本拠地を置かない日本のメーカーは

余計な出費を強いられてしまうわけだけど、それってフェアでは無いなあ。

決断

今更ながらセパンテストが始まる前の段階で

ヤマハが2021年以降の体制を発表したのは

驚きでしたね。

個人的にはビニャーレスが残留するとすれば開幕戦

カタールあたりになるだろうと予想してはいたものの

それ以上にヤマハは早急にビニャーレスとクワッタハッホの

確保を急務としてきていたようですね。

更に加えて、現役を引退したホルヘ・ロレンツォのテストライダーの

起用と、これまではロッシに忖度して、なかなか決断が出来ないのが

恒例だった(?)ヤマハにしては、強い決意を感じる迅速な判断だったと思います。

 

このロッシを外して、ビニャーレスとファビオを起用し

ホルヘをテストライダーにするという諸々の決定を見ていると

MOTOGPの活動方針を決定する上層の誰かが換わったのかな?

と推測されます。

と同時にMOTOGPのプロジェクトに投じられる予算も大幅に増額されたか。

それはホルヘのテストライダー起用がそうで、

ここ数シーズン、特に日本のメーカーが海外のテストコースで

テストを行うメリットは散々言われているにも関わらず、

ヤマハがそれに踏み切れなかったのは一重に予算が無かったからだと。

 

ホンダのようにテストライダーにブラドルを起用し、

彼用のテストスタッフにテスト用の拠点を準備し、テスト用のマシンを

準備すれば、かなり金額が今のGP活動に上乗せされることは容易に

想像されるところで、GP活動費は更に高騰することでしょう。

 

ヤマハは昨年、ジョナス・フォルガーと契約していたにも関わらず

ほとんど開店休業状態だったのは、彼を走らせる予算が無かったと想像します。

だから、今年、決して安いライダーでは無いロレンツォを起用したことでも

わかるように、その分の予算が増えた。

前述のライダー選択、MOTOGP活動予算の増加など

これまでのヤマハには無かった果敢な決断力はある意味ヤマハらしくない。

これは今後のMOTOGPにおけるヤマハのポジション的にも

ターニングポイントになる出来事だと思います。

 

来シーズン以降のヤマハの戦いぶりに期待が持てる決断だったと思いますね。