ヤマハの戦法

WSBはドニントンパークを終えて、ヤマハ

トプラック・ラズガットリオーグルがポイントリーダーに

立ちました。

ドニントンのレース2ではポイントリーダーのジョナサン・レイ

トプラックの一騎打ちになる中でレイが転倒したこともあって

レイがプレッシャーからミスをしたのでは?とも言われましたね。

 

しかし、今季、レイが思うようにポイントを重ねられないのに

対して、ヤマハのトプラックがそれを上回るペースでポイントを

重ねてきたのは事実で、これは今シーズンの今後も目が離せない展開と

なっています。

 

前年まで前人未到のWSB6連覇を達成したカワサキ+レイに

何が起こっているのか?

について読み解いていこうと思います。

 

これまで磐石の強さを見せてきたカワサキ+レイですが、全日本の

トップライダーによるトークショーで4人のライダーが異口同音に

言っていたのは、ピレリタイヤの使い方が抜群に上手いというポイント。

あらゆるコース、コンディションでタイヤのポテンシャルを引き出すデータを

チームが持っているから一番上手にタイヤを使いこなしている、だから

シーズン通して、安定して結果を残し続けることが出来ると。

(もちろん、それだけではありませんが、大きな要素のひとつとして)

 

だからライバルチームがこれを打ち破るには、それ以上にタイヤを

上手く使いこなすか、あるいは別の方法で彼らを打ち破るか?のどちらかしか

無いわけですが、今季のヤマハはその後者、別の方法で打ち破るやり方を

確立した感じはしますね。

 

こういう状況になった大きな要因は2019年から導入されたスーパーポールレース

でしょうね。

ピレリはこのレース用によりソフトだけど、ライフが短いSCXというタイヤを投入していました。

もちろん、カワサキのレイもスーパーポールレースには履いて走りますが

通常の距離のレースでは普通のソフト SC0を履くのが王道パターンでした。

ところがこのライフが短いけどグリップするタイヤを通常距離のレースでも

使ってみようとする動きがあって、これに成功したのが去年のアラゴンでの

リナルディの優勝でしたね。

しかし、このSCXを使うという戦法は諸刃の剣でセットアップに失敗すると

全然戦えない。あっという間にタイヤが終わってしまう。

実際、昨シーズンもレディングやデイビスといった同じドゥカティ

ライダーがSCXを使いましたが、一度も成功しませんでした。

その理由はリナルディに比べて体格が大きく体重が重い2人では

タイヤが思った以上に消耗してしまうという側面もあったようです。

 

そして今季、ヤマハはこのSCXをベースに更にライフを若干伸ばした

SCXソリューションをリヤにメインに履く形でセットアップを完成させつつ

あるようですね。

当然、体格も大きく体重のあるトプラックですから、一歩間違えると

タイヤが終わってしまって、レース距離持たないリスクもあるわけですが

今季のここまで見ると、ドニントンのレース2以外は全てSCXソリューションを

履いて優勝しています。

レイ+カワサキ陣営がずっと通常のソフトのSC0を使い続けていますから

両者のタイム差は純然とタイヤのグリップ性能の差から来るものでしょうね。

更に足回りのセットアップ+電子制御の充実がソフトなタイヤを

長持ちさせることが出来ている要因みたいですね。

面白いのはカワサキよりも回転数制限が緩いヤマハですが、最高速を見ると

どのコースでもそのカワサキよりも低いんですよね。

つまり、ラップタイムをコーナーリングセクションで稼いでいる。

この辺はハンドリングのヤマハの面目躍如でしょうか。

 

逆にドニントンのレース2を見ると、両者同じSC0を履くと

両者のパフォーマンスに差はなく、むしろちょっとレイの方が

良いくらいに見えましたね。

 

今季、あらゆるコースで、このSCXソリューションを使いこなすことが

出来ればグッとトプラックのタイトルが近づくんじゃないかと。

現状、カワサキ+レイはSCXソリューションタイヤを使いこなせないように

見えるんですよね。通常のレース距離に関しては・・・。

それとも王者の意地を見せるのか。

 

いずれにしろ、まずはレイにとっては第2の母国レースとも言える

アッセンですね。ここでも敗れるようだとやばいです。