ドゥカティパニガーレ視点的WSB

昨日、Twitterの方でドカマニさんに情報提供して

いただいた内容を私の持っている情報とシャッフルして

無冠に終わったドゥカティ パニガーレ時代のワークス活動を

レギュレーションの変遷と共に振り返ってみたいと思います。

 

2008年 2気筒 1200cc化

    ①エアリストリクターの装着義務付け

    ②最低重量 4気筒+4kg

    ③エンジンの改造範囲 カムシャフトを除いてノーマルパーツを

     使用すること

  

2013年 パニガーレデビューと共にアルスターとジョイントし

    ワークス活動復活

    ライダーはカルロス・チェカとアイルトン・バドビーニ

    しかし、2度のポール獲得以外は表彰台ゼロ

    特に硬いタイヤじゃないとレース距離持たないという持病を

    抱えていることがわかる。

    勝てない2気筒に対して最低重量が4気筒と同じまで軽減される

    シーズン終了後、アルスターと決別

    タイトルはカワサキのトム・サイクス

    マニュファクチャラーズランキング6位

 

2014年 かつてのワークスチームの母体であるフィール・レーシングと

    ジョイント、ライダーも一新、チャズ・デイビスダビデ・ジュリアーノの

    コンビとなる。

    この年も目立った成績は残せず

    タイトルはアプリリアのシルヴァン・ギュントーリ

    マニュファクチャラーズランキング4位

 

2015年 4気筒もエンジンの改造範囲が2気筒と同等まで厳しくなる

    エヴォレギュレーションを採用

   (コンロッド、クランクシャフト、ピストンの交換不可

    カムシャフトのみ交換可能)

    結果的に4気筒の戦闘力を削ぐことに。

    メインスポンサーにアルバイットが付き、アルバイット・ドゥカティとして始動。

    またエキゾーストメーカーがテルミニョーニからアクラポビッチに変更。

    シート下に突き出したサイレンサーをシーズン途中から投入。

    アラゴンラウンドでチャズ・デイビスがパニガーレに初優勝をもたらす

    デイビスは5勝を上げてランキング2位

    タイトルはカワサキジョナサン・レイ

    マニュファクチャラーズランキング2位

 

2016年 体制は変わらず

    エキゾーストが開幕戦から2本出しになる

    デイビスが11勝を上げてランキング3位

    タイトルはカワサキジョナサン・レイ

    マニュファクチャラーズランキング2位

 

2017年 この年から第2レースはリバースグリッドを採用

    ダビデ・ジュリアーノに替えてマルコ・メランドリィが加入

    デイビスは7勝をあげてランキング2位

    メランドリィが2勝をあげてランキング5位

    マニュファクチャラーズランキング2位

 

2018年 最高回転数と成績に応じて回転数制限を導入

    デイビスは2勝でランキング2位

    タイトルはカワサキジョナサン・レイ

    マニュファクチャラーズランキング4位

 

翌年からV4マシンのV4Rがデビューすることになり、

パニガーレは2018年をもって退役。

ドゥカティスーパーバイク史上初めて無冠で終わったマシンとなった。

 

 

 

 

 

その判断

スティリアGPでヤマハのマーヴェリック・ビニャーレスが

ブレーキトラブルを抱えながらも走り続けたことで

結果的にブレーキが破損、クラッシュ、赤旗中断となったことに

ついて、異変を感じた時点で、ピットインしてリタイアするべきだった

というアレックス・リンスの発言を初め、非難の声が上がっているようですね。

 

ただ、ブレーキに関してはビニャーレスに限らずヤマハの4名は

いずれも苦労していて、それに対してブレンボが対策品があることを

連絡していることも明らかになっています。

 

結果的にビニャーレスがこの対策品を使わなかったことで

彼のブレーキがオーバーヒートしてパッドが脱落、ブレーキが

全く効かなくなり、マシンから飛び降りることになるわけですが、

この事も彼への批判に拍車をかけているようですね。

 

ただ、ビニャーレスサイドからすれば、ブレーキに問題はあることは

ずっと分かっていたわけで、当然、フリー走行の段階から

ブレーキの温度のチェックはシビアに行っていたであろうことは

予想の範囲内(そうでなくともブレーキの温度管理はシビアにやっている)

で、その上でイケルと判断して従来型のキャリパーを採択したんだと思います。

当然、キャリパーを変えると握りしろやブレーキの効き方が変わりますから

それまでのセッションで使ってきた従来型とはライディングやセッティングを

変えないとならなくなる可能性もありますしね。

 

だから、何も考えてないわけではなくって、彼らは彼らなりに従来型を使い続けるのと対策品に交換することを天秤にかけて、従来型で勝算アリと見て

彼を送り出しているであろうことは予想できる話です。

 

結果的にその判断は間違いだったわけですが、これは完全に結果論。

実際、混戦から離れてブレーキダクトに風を送るようにしたら

握りが復活したとビニャーレスも発言してますからね。

彼は前の週のレースでも一時期ダメになったクラッチが走っている間に

復活して走れるようになった経験もしてますしね。

 

それからリンスが言った異変を感じた時点でピットインリタイアするべき

という意見ですが、この時点で彼はトップのファビオ・クオルタラーロから

わずか18ポイントのランキング3位で、そのファビオは後ろに居て

ポイントを詰めるチャンス。

世界チャンピオンを目指す彼らにとってチャンピオンシップポイント獲得は

非常に重要なのは、言うまでもない話で、今年はマルク不在で絶好の好機。

この状態で、みすみすピットに入って自らノーポイントを選ぶという

選択肢はヤマハのエースとしても有り得ないというのが私の考え。

1ポイントを獲得する可能性が1%でもあるならば走り続けるのがレーサーとしての

性というものでしょう。

 

ですから、私はあの状態でビニャーレスがピットインリタイアを

選ばなかったのはむしろ、当然。

と考えているんですよね。

 

もちろん、他のライダーを危険にさらす可能性があったのは否定できませんが。

 

一貫性の無さ

怒涛のようなレッドブルリンクの2連戦を終えて

ドッと疲労感に見舞われる思いですね。

 

深刻なクラッシュも何度もありましたが、

それ以上に繰り返されるグリーンゾーン走行に対する

ジャッジメントの一貫性の無さ、ペナルティによって

変更されるリザルトにもウンザリしたという面もあると思います。

 

それにトドメを刺したのがスティリアGPのMOTOGPクラスの

ファイナルラップの攻防でポル・エスパルガロが最終コーナーを

飛び出しながらも加速し続けて3位でフィニュッシュして、

そのまま、3位を獲得したことでしょうね。

 

それまでのオーストリアGP及びスティリアGPのMOTO2、3レースでは

コース外走行、グリーンゾーンを走行した場合は例外なく

降格ペナルティとなっていましたからね。

 

オーストリアGPのMOTO3の最終ラップの最終コーナーでは小椋選手が

他車との接触を避けるためにコース外にほんの少しタイヤを落としましたが

結果的に降格ペナルティとなりました。

 

スティリアGPのMOTO2ファイナルラップではホルヘ・マルティン

トップ走行中に立ち上がりで膨らみグリーンゾーンを走行

有無を言わさず降格処分となり、優勝をフイにし、マルコ・べッセッキが

初優勝を手にしています。

 

このようにここまでは理由の有無を問わず、コースアウトグリーン走行は

一律、降格処分になっているわけです。

 

ですから、スティリアGPの最終ラップの攻防の末、派手にコースアウトした

ポル・エスパルガロは当然降格処分で、4位を走っていたホアン・ミールが

繰り上げ3位になると多くの人が思ったはず。

 

ところが、何とお咎めなし。

スチュワードはポルのイン側にミラーが居て、行き場が無かったための

仕方がないコースアウトだったとして、処分をしなかったようですが

それなら前述の小椋選手のケースも降格処分は不当なはず。

 

この辺のジャッジメントの基準の曖昧さ、不透明さ、一貫性の無さが

運営に対する不信感に繋がっているでしょうね。

マルティンなんかは未だにWEB上で不満をぶちまけています。

 

グリーンゾーンに出たら即降格。

 

このシンプルなルールならわかりやすいのに何でわざわざ

自らややこしくしてしまうんでしょうね?

運営サイドにはもっとしっかりして欲しいところです。

 

 

 

 

ストーブリーグはこうなっている

ドヴィの離脱を受けて最新情報をまとめてみた。

 

レプソル・ホンダ  マルク・マルケス(確定)

          ポル・エスパルガロ(確定)

ホンダLCR     アレックス・マルケス(確定)

          中上貴晶

モンスター・ヤマハ  マーヴェリック・ビニャーレス(確定)

           ファビオ・クオルタラーロ(確定)

ペトロナスヤマハ  ヴァレンティーノ・ロッシ

           フランコ・モルビデリ(確定)

エクスター・スズキ  アレックス・リンス(確定)

           ホアン・ミール(確定)

ドゥカティ・コルセ  ジャック・ミラー(確定)

           ヨハン・ザルコ?

プラマックドゥカティ フランチェスコ・バグナイア

            エネア・バスチアニーニ?

アヴィンティア・ドゥカティ ティト・ラバット

              ?????

レッドブルKTM   ミゲール・オリベイラ(確定)

           ブラッド・ビンダー(確定)

テック3・KTM    ダニーロペトルッチ(確定)

           イケル・レコーナ(確定)

アプリリア・グレシー二  アレイシ・エスパルガロ(確定)

             アンドレア・イアンノーネ?

 

カルさんの行方が気になりますねえ・・・。

エンジンの封印

開幕戦からエンジントラブルが出ていた

ヤマハのM1。

ヤマハはトラブルが出ていたロッシとモルビデリの

エンジンを日本に送り、エンジンをもうレースに使わないとして

ローテーション登録から外して、エンジンを分解。

原因調査を行った結果、バルブ周りの設計に問題があることを

突き止めたようです。

 

これを受けて、ヤマハMOTOGPに参戦する6メーカーのコンストラクター

結成されているマニュファクチャラー協会に対して

現在、シーズン中の仕様変更が認められていないエンジンの封印を解いて

このバルブ周りのパーツを対策品に交換させてくれないか

という提案をしたようですね。

ただ、全会一致でないと受け入れられないこの提案は今のところ全会一致を

見ていないと聞いています。

 

というのも今回の事例を認可してしまうと今後もフォロワーが現れて

シーズン中のエンジン封印の解除、

そしてそこに巧妙に仕様変更を紛れ込ませる可能性まで

考えないとならないリスクも鑑みている模様。

 

この辺に関しては、ヤマハ徹頭徹尾、原因の説明と対策品が何ら

ポテンシャルアップには繋がらないことの説明をしないとならないですね。

 

この件は簡単には片付きそうもないように思いますが

そうしている間にヤマハのライダーがエンジンブローしたら

目も当てられない・・・。

 

どういう落としどころになるのか、ちょっと見えにくいですね。

ドゥカティの選択

ドゥカティが来期、アンドレア・ドヴィジオーゾと契約を

結ばないことが明らかになりました。

2013年、ロッシの後任としてドゥカティに加入し長年エースとして

ドゥカティを引っ張ってきたライダーとの決別はひとつの時代の

終りを感じさせるものがありますね。

 

個人的にはこのドゥカティの判断は実に妥当と言いますか

昨シーズンが終わった時点でドゥカティはドヴィに見切りをつけていたように

思いますね。

2017年から3年連続のランキング2位、チャンピオンになったマルク・マルケス

次ぐ順位を獲得しているものの、最後までタイトル争いに絡んだ2017、2018シーズンとは異なり、

2019年に関しては完膚なきまでにマルクにやられ、惨敗に近い状態でのランク2位。

印象的には速さをみせたファビオや2勝したリンスの方が印象に残っています。

この結果を見て、ドゥカティは今後も彼と仕事をしていくと仮定して

マルクを倒して、世界王者に輝ける見込みはかなり低いのではないか、というか

無理じゃないか?という思いを強くしたように思うんですよね。

そこに来て、ドヴィサイドは賃金上げろと来たわけですから(まあ、言い分は正しいけど)

これにドゥカティサイドがカチンと来ても無理は無いかも知れません。

実際、これで両者は平行状態に陥いってしまいました。

 

世代交代という言い方も出来ますが、むしろ、他メーカーの人事をみても

どのメーカーも打倒マルケスのためのライダー選択、既にマルクと決着付けが

ついているベテランライダーではなく、彼とのバトルが未知数の若い世代への可能性を

見出す人事が目につくところです。

ドゥカティも同様、先を見越した投資的な意味でもドヴィ体制からの脱却を図ったと

見ていいと思います。

来季はワークスの2人が新しいライダーになるという異例な形で(通常はどちらかが残留する)

新たな時代の幕開けを図る形になります。

 

ところで、ドゥカティのライダー選択を見ていると、一貫性が無いという話も

ちらほら聞こえてきますが、その辺はやはり、他メーカー以上にスポンサーの

発言力が大きく影響しているのでは無いかと。

ドゥカティのような中小企業が世界選手権に打って出るにはビッグスポンサーの

マネーは必要不可欠で、その結果スポンサーの意見が大きく反映されているようですね。

つまり、当時、マルケスを上回る最高金額で迎え入れられたホルヘ・ロレンツォ

ずっとそこそこの金額で働き続けているドヴィジオーゾ

そして格安の賃金で働かされているペトルッチの3人だと

求められる成績のレベルが異なるわけで、それがこの3人への扱いの差になって

表れているようですね。

ただ、スポンサーの判断が性急すぎて、現場で結果が出る前に切る切らないの

判断を下してしまうのが、結果的に失敗と映る部分ではありますが・・・。

 

来季のドゥカティワークスがミラーと誰になるか今のところ不明ですが

打倒マルク・マルケスの布陣が敷けるかどうか、ドゥカティ陣営の手腕が問われるところです。

少なくともドヴィは優秀な開発ライダーでもありましたから・・・。

下克上のシーズン

今シーズンのMOTOGPは非常に特殊な状況で開催されているのは

今更説明するまでも無い事ですが、その影響でしょうか、

ブルノサーキットで行われているチェコGPでは

予選の上位をアヴィンティア・レーシングの型落ちマシンを

走らせるヨハン・ザルコに

ペトロナスヤマハのファビオ・クワルタラーロにフランコ・モルビデリ

という全員サテライトチームという異常な光景となりました。

 

MOTOGPにおいては、当然、本社のバックアップ体制も含めて

ファクトリー体制の方が手厚く、それを利して、結果に結びつけてきた

わけですが、今シーズンはこの特殊な状況においてはそれは当てはまらないようです。

 

それはやはり、コロナ渦の影響によって、本社の開発体制、テストライダーの稼働率

パーツの供給などが本来の体制で動けていないためにマシンの熟成が遅々として

進んでいないという状況があるように思います。

加えて、この連戦連戦ですからテストを間に挟んでマシンを熟成する機会もありません。

 

その点、型落ちのマシンだと去年丸々1年走らせたデータはあるわけですから

今の時点だと限られたレースウィークの間でのセットアップの完成度では

型落ちサテライトの方が上なのかも知れないですね。

特にザルコはアヴィンティアでありながら実質的なチームスタッフドゥカティコルセから

派遣されたスタッフで固められているようですから、ラバットとは体制が違う。

ファクトリースタッフが去年のマシンを仕上げればかなりの完成度かと。

 

ただ、ヤマハに関してはファクトリーの方がどうも滑りやすいコンディションでの

セットアップが得意ではない印象がありますね。

むしろ、ペトロナスの方が上手い。

意外と・・・ですが、来期ロッシがペトロナスに加入するなら彼の抱えている問題は

解決する可能性もあるんじゃないかと思わせるものがあります。

 

ただ、このままシーズンが進むとも考えにくいだけに、シーズンのどの段階で

ファクトリーがサテライトを凌駕してくるか。

その点は要注目ですね。