デイビスとパニガーレの戦い(3)

2015年に入るとレギュレーションに大鉈が振るわれました。

もっとも、これはいきなりではなく、2014年から事前告知されていた

話で、既に一部メーカーは2014年からテスト車両を実戦参加させていました。

 

これらは通称エヴォマシンと言われ、当初はエヴォレギュレーションと

言われていましたね。

大きな変更点はスペシャルパーツの使用が禁止されたこと。

つまり、一部のワークスマシンだけが使用することの出来た

エンジンの動力系パーツ、クランクシャフトなどの

大物系パーツに関して、全て事前登録のキットパーツを

使用することが義務付けになりました。

高価な一点モノのパーツは使用できないということですね。

それからピストンとコンロッドはノーマルから交換不能となりました。

 

ただ、この規定は2気筒勢は既に採用されていて

2008年2気筒が1200ccまで排気量が引き上げた際にエンジン内の

パーツは全て登録されたキットパーツへの交換しか許されない

という条件が付加されていました。

今回の規定変更はその範囲を4気筒まで広げようということなんですよね。

 

これはつまり、ワークスチーム、マシンにかかる予算の抑制

そしてキットパーツ登録ということで、プライベーターが購入出来るようにして

プライベーターの戦闘力向上を図ろうというのと、

2気筒と4気筒の戦闘力格差の是正が狙いだと思われます。

 

その後のレギュレーションの変遷を見ると、ドゥカティ優遇政策というよりは

プライベーターとワークス勢の戦闘力格差を縮める目的とコストダウンの方が

大きいのかなと思います。DORNAは常にその辺に配慮したレギュレーション

変更を行っていますので。

ちなみにキットパーツ類に価格上限が設けられるのは翌年からとなります。

 

2013年にカワサキで世界王者に輝いたトム・サイクスは

このエヴォ仕様の車両に乗った際に明らかに加速力が落ちたと指摘しています。

だから彼のようにハードブレーキングで減速して

クルッと回って加速するスタイルより、よりコーナーリングスピードの速い

スタイルの方が合っているだろうと言っています。

それはこの年から彼のチームメイトとなるジョナサン・レイにより適している

ということでもありますが・・。

 

それはさておき、この規定の採用は明らかに2気筒勢と4気筒勢の

マシンの戦闘力を縮める効果があったようで、チャズ・デイビス

開幕戦のフィリップアイランドから2レースともに3位表彰台に

登ることになります。

フィリップアイランドは前年表彰台に上ったイモラとは全く

キャラクターの異なるコースで、イモラがストップ&ゴーだとすれば

フィリップアイランドは開け開けのコーナーが続く

マシンの加速力、トップスピードが効いてくるコース。

ここでの表彰台は4気筒勢に対してエンジンの伸びで負けていないことを

示すリザルトと言えるでしょう。

これはこの年からアルバイットをメインスポンサーに迎えて

新体制でスタートしたアルバイット・ドゥカティにとっては幸先の良い

スタートと言えたでしょうね。