カタールテスト 雑感 その2

さて、ライダー編。

このテストの一番の驚きはドゥカティワークス入りした

ジャック・ミラーの快走でしたね。

去年はドヴィ、ペトルッチのコンビで散々低迷したドゥカティワークスですが

ようやく光明を見出してきたっぽいかな。

去年投入されたグリップの増したリヤタイヤとどうシャシー

折り合いをつけるかが、ドゥカティは鍵でしたが、ミラーはいいバランスを

見つけたようです。

と言ってもカタールはちょっと特殊なコースで例年ドゥカティ

ここではいい走りをするんですよね。

だからここで快走したからチャンピオン候補かというと、それは時期尚早というものかな。

ただ、ここでひとつ勝つことは本人とチームにいい効果を及ぼすのは間違いないことで

それが一番シーズンに対する影響が大きいと思いますねー。

マリーニがミラーはドゥカティヤマハのように曲げると言っているように

ドゥカティの課題である旋回にいい答えを見つけたようです。

ミラーは去年くらいからすっかり落ち着いてタイヤマネージメントが出来る

ライダーになってますから、序盤は彼が中心になってもおかしくないかも知れませんね。

 

そしてこのミラーと共に快走ぶりを見せつけたのがファビオ・クオルタラーロ。

今年の彼の発言は去年の失敗に大いに反省しているのか、非常に慎重なコメントが

多いですね。ワークスに入って責任が増したこともあってか、トップタイムにも全く

慎重な姿勢を崩していませんでしたね。

コースコンディションが良くて、タイミングが良ければミラー以上のタイムは

出ただろうとしながらも、大事なのはテストではなくレースだと。

ただ、相変わらずタイヤに熱的に厳しいのかリヤだけでなくフロントフェンダーにも

穴が空いていて、放熱にかなり気を使っているのがきがかりなところ。

ファビオ、ビニャーレスの両ワークスライダーはリヤブレーキを多用して

タイヤを地面に押し付けて走る傾向が強いだけにタイヤが休まる時間が

短く温度が上がりやすい傾向が他のヤマハライダーより強いかも知れません。

春先はともかく夏場の連戦でどうなるか、非常に暗雲が立ち込めるところ。

 

そしてそのファビオのチームメイト、ビニャーレス。

ファビオが前後のブレーキを多用して小さく小さくタイトにコーナーを回るタイプとすれば

ビニャーレスはスライドを多用して走るタイプ。特にリヤタイヤをサーっと流すタイプだけに

リヤタイヤのエッジのグリップに非常に神経質なタイプ。

これがバシっと決まると速いけど、ちょっとでもコンディションが変わってしまうと

タイムが出ないだけにテストが良くても本番で路面状況が変わると・・・・。

 

この3人以外で目を引いたのは去年の王者ジョアン・ミル。

マシンは昨年型を踏襲しているだけに完成度が高くタイムシートでも安定して

上位に位置していましたね。

やはりタイトルを取ったこともあり、非常に落ち着いてセッションをこなしている

という感じですね。

車体の完成度は高いだけにどのサーキットに行っても安定して成績を残せるので

他メーカーがマシンを仕上げきる前の序盤は上位完走が多くなりそう。

チャンピオンの真価発揮となるか。

 

 

 

カタールテスト 雑感 その1

開幕戦の舞台となるカタールでの今年初のMOTOGPテストが

終了し、いよいよ開幕戦を待つ形となりました。

 

ここではハード編、ライダー編に分けてカタールテストの

様子について触れていこうかなと・・・・。

 

まず、ハード編ですが、今シーズン、2021年に関してはエンジンの開発が

凍結されており、メーカーが開発できる領域はシャシーとエアロダイナミクスとなっています。

 

特にこのカタールで目に付いたのはウイングレットを各社各種登場させていること。

やはり、エンジンの開発が出来ないぶん、ライバルに差をつけるには

この分野が重要になってくるというのは各社の一致の認識というところか。

 

特にこの分野の先鋒たるドゥカティはカウル下部にエアダクトを設けて

空気を下方向に曲げるような形で車体を下に押し付ける新しい発想を

持ち込んできましたね。

 

他のメーカーがウィングレットを巨大化しただけだったのに対して

相変わらず一歩先を行っている感がありました。

速いエンジンにダウンフォースで押し付けてグリップを稼ごうという

考え方は今年も健在です。

 

それから去年未勝利という屈辱のシーズンを送ったホンダは

このテストの前にテストライダーのブラドルが合計10日間にも

及ぶテストを敢行するなど、今シーズンに対する並々ならぬ決意を

感じさせる早さでマシンを仕上げつつありますね。

マルクの復帰は未定ですが、マルクじゃなくても勝てるマシン作りが

今年のホンダの課題でしょう。

今年はメインフレームの形状が変わっていて、より旋回性を増す方向

ピボット周辺の剛性を落としているようです。

 

毎年毎年、マニアで無ければわからないようなちょびっとずつの

変化をしていくヤマハは去年大きく外観の変わったM1を熟成路線。

去年は久々に大きめに手をいれたもののトータルバランスはお世辞にも

いいとは言い難い部分があっただけに、その辺のパワーアップしたエンジンと

どのコースでも安定して性能を発揮する安定感が欲しいところ。

ただ、リヤだけではなくフロントフェンダーにも大きな穴があいており

相変わらず、タイヤに熱負担を強いるマシンキャラクターは変わってないようで

これが良くも悪くもこのマシンのポイントになりそうです。

タイムは出てはいるんですけどね・・・・。

 

KTMは去年3勝を挙げたマシンを熟成させてきていますが、いかんせん

MOTOGPクラスの経験が浅い3人と、移籍して来たばかりでKTMが初めての

ペトルッチということで、セットアップに苦心している模様。

ペトルッチが元気ななのが唯一の救いか。

やはり、若いライダーが多いのがマシンのセットアップのアキレス腱になりそう。

 

アプリリアは車体をダイエット。ようやく最低重量以下までマシンを軽くすることが

出来ました。これでバラストを搭載してコースに合わせて重量バランスを変更することが

出来ますし、もちろん軽くなった分加速力もあがっている模様です。

実際、去年よりもタイムシートの位置は確実に上がっています。

ただ、スミスに逃げられたことで、シーズンが始まったら誰がマシンを熟成するのか

という問題点は残ります。

 

そして王者スズキですが・・・・。

実は一番変更点が少なかったのがスズキで、2022年に向けて新型エンジンを

試していたようですね。

2021年シャシーも試していたようですが、いかんせん去年、最も成功したマシンだけに

高次元でバランスが取れており、なまじ手を入れない方が結果的に良い結果に

繋がるような気がしますねーーー。

ただ、去年よりアドバンテージは減っているでしょうから、どこまでバランスで勝負が

出来るかというところでしょう。

 

明日はライダー編。

 

 

 

二度あることは三度ある?あるいは三度目の正直

今年からヤマハのテストライダーに就任した

カル・クラッチロウがヤマハMOTOGPに乗るのは

3月5日から始まるカタールテストのウォーミングアップデイに

なるとのこと。

 

これは後日始まるレギュラーライダーのためにマシンをウォームアップしたり

各部の動作チェックをする日で合計3日が組まれていて、

ルーキーライダーはこの3日間も走ることが出来るようになっています。

 

ヤマハクラッチロウがようやく2021年型マシンにご対面するのが

これが初めてなのに対して、ホンダは既にテストライダーのステファン・ブラドルが

既にヘレスで2021年型マシンで合計10日間のテスト走行を行っています。

 

これは結局、メーカーがテストライダー専用にマシンを1台、レース車両とは

別で仕立て上げてヨーロッパに送っているかどうかという体制の違いから来るもの。

 

過去2年、ヤマハはジョナス・フォルガー、ホルヘ・ロレンツォをテストライダーとして

契約しながらも、彼ら専用のテストマシンを用意しなかったことで、全然有効に

使いこなせなかった過去があるだけに、そこを今年は見直してくるのか、それとも

相変わらずなのか注力していましたけど、ここまでの状況を見ていると改善された様子は

見て取れないですね。

 

記憶している範囲内だと、ジョナス・フォルガーがGPマシンに乗ったのは

わずか一日、スペインGPの事後テストで、彼が走らせたマシンはすぐに日本に

引き上げられているはず。

ホルヘはセパンテストの初日と、初開催のアルガルベテストの計2日でマシンは

いずれも型落ちのM1だったはず。

これでは有効なテストが出来る環境とは言い難いところ。

 

そして今年もどうやら彼ら海外テストライダー用にマシンを新規で

1台用意することは無いようで、この辺はホンダとの予算規模の違いですねかね。

MOTOGPマシンは安くは無いわけで、国内テスト用に1台とそれ以外に

海外テスト用にもう1台はかなりの金銭的負担があるんでしょう。

 

とはいえ、テストライダーとして契約しているわけですから

これを最大限有効に使えって結果に結び付けられるような体制を

構築した方がいいんじゃないかなと・・・・。

 

カルさん、今年、どのくらい走れるんだろうか??

 

 

私的GPライダー 考察学 その3

とうとうスミスに愛想を尽かされて出て行かれた

アプリリアはアレイシ・エスパルガロとロレンツォ・サバドーリという

コンビで走ります。

 

エース格のアレイシは言うまでもなくブレーキングが

うまいライダーで、ここで一気に距離を詰めてくる。

最近はそれだけじゃなくって、非力なマシンのハンデを

詰めようとコーナーもかなり頑張って走っている。

ブレーキングで突っ込むだけではなく、コーナー速度も

殺さないように両立を頑張っている感じ?

ただ、いかんせんシャシーが答えてくれてないって感じですねー。

旧モデルより明らかに素性は良くなった新マシンだったものの

アプリリアの体制だとシーズン通してマシンの熟成が進まなかった模様。

どうもシャシーの剛性バランスがおかしい感じですね。

だから速度を保ってコーナーリングしようとするとシャシーがワナワナと

するというか、堪えきれない挙動が見えるようで・・・。

エンジンは非力、シャシーもおかしいとなるとライダーは苦労する。

意外だったのはアルガルベで速かったんですよね。

あんだけの高速コーナーのあるコースで速い。何故だ?

 

サバドーリは非常に長身のライダーで器用だなという印象。

WSB時代にはチームメイトのラバティを上回る一発の速さを

見せるなど、速さはあるし、体が大きいだけに器用にマシンの上で

動いて上手く乗っている印象。

ただいかんせん経験の浅さか、タイヤの使い方が上手くないのか

レースだとからっきしなんですよね。

イタリア選手権でタイトル取るくらいだから悪いライダーでは

無いけど、まだまだ経験を積んでレースの走り方を覚えたら

ひょっとしたら化けるかも?

しかし、アプリリアのセカンドライダーはこれまでもマシンが1年間

全くアップデイト全くなしとか平気であるから、どんなに頑張っても

成績に反映されない可能性は高い。

私的GPライダー 考察学 その2

今シーズンのドゥカティで最大の注目株はヨハン・ザルコと

見ています。

というのも、ドゥカティのマシン開発はストレートスピードと

ブレーキングスタビリティという元々の強みをより強くする方向の

マシン作りで、それはドヴィのライディングスタイルともマッチしていた。

 

しかし、ロレンツォ加入以降のドゥカティ、ジジ・ダリーニャさんは

その方針を転換しつつあって、それがロレンツォ離脱後のザルコ獲得に

繋がった。

つまり、ジジさん的にはドゥカティの苦手とするゾーンである旋回力の

改善のために、ザルコが欲しかったということだと思う。

ザルコの乗り方はロレンツォ同様、ヤマハのM1流が非常に濃く

フロントタイヤの旋回性に頼って、コーナーリングスピードを高いまま

コーナーに飛び込んでいくスタイル。

これは直4マシンが得意とするハンドリング特性で、ドゥカティ

ホンダのようなV4マシンは得意なエリアではない。

V4マシンはむしろ、フロントタイヤで旋回する時間を短く

言ってみればV字型に素早く向きを変えて脱出する乗り方の方が合っている。

実際、ザルコの転倒回数がMOTOGPで一番多いというのはその

フロントタイヤを攻め立てる乗り方とマシンのミスマッチングから

来る部分もあったと思われる。

が、それだけにジジさんはまだデスモセディッチに改良の余地を感じているように思いますね。そしてその開発にザルコは欠かせない。

 

そしてザルコの乗り方は多くのMOTO2ライダーのスタイルにはマッチするんじゃないかな。

今年彼のチームメイトになるホルヘ・マルティンもかなりフロントに頼った

ライディングスタイルでバンク角も深い。

エスポンスラーマに加入したエネアとマリーニもザルコのデータを参考にすると

語っている。

 

ザルコの場合、体重が軽く小さく、オフセット量が少ないだけにフロントタイヤの

荷重コントロールが上手いうえに、フロントタイヤの磨耗が少ない。

だからこそ、ああいう乗り方が出来るんでしょうけど、今年は最新マシンを

手に入れて、彼の好みのマシンに近づくことが出来れば、念願の優勝もあり得ると思います。

そして、ザルコが乗りやすいマシンは他のドゥカティにも強力な武器になるんじゃないかな?

 

私的GPライダー 考察学 その1

さて、ということで、今シーズンMOTOGPに参戦する

ライダー達をライディングスタイルと合わせ込んで考察していきたいと

思います。まずは前半戦。

 

ドゥカティ・コルセ 

ジャック・ミラー

 

遂にドゥカティのエースの座を手に入れてオージー

ジャック・ミラー。

15歳頃まではモトクロスをやっていてロードの経歴が

全然短いのにMOTOGPのキャリアは長いという異色のライダー

ある意味、天才肌なんでしょうね。

以前は速いけど、荒っぽくて転倒の多いライダーという印象だったけど

本人が言っているように、結果が出るようになってから落ち着いて

レースを運べるようになったとのこと。

以前の彼は結果を求めるあまりに焦ってタイヤを早い段階で使い切っていたけど

今はレースディスタンスを考えてタイヤを温存して走れるようになった。

 

ライディングスタイルは非常にオフセット量が多くバンク角も深く

アグレッシブなスタイルだけど、彼の場合、リヤのスライドコントロール

非常に上手い。

リヤを綺麗に流しつつフロントにカウンターを当ててマシンの向きを

コントロール出来るライダー。

悪コンディションで速いのはスライドコントロールの上手さ+モトクロス

仕込みのテクニックの賜物か。

旋回性がイマイチで、曲がりにくかった去年のマシンでも巧みにスライドで

向き変えをしてのけていた。

ドゥカティが今後どういう方向にマシンを開発してくるかわからないけど、

彼向けにマシンを合わせ込めれば、より結果は残せると思う。

 

ドゥカティ・コルセ

フランチェスコ・バグナイア

 

2018年のMOTO2クラスの世界王者。

今年でMOTOGP3年目だけど、まだまだいい時と悪い時の落差が

大きいように見えますね。

元々、非常にブレーキングドリフトが上手くって、

落ち着いて乗るタイプのライダーだけど、

それだけフロントで頼って走るタイプだけに

今のミシュランドゥカティのハンドリングに苦戦している模様。

まあ、彼のコメントを聞く限り、リヤグリップが高すぎて

フロントをプッシュしてしまうから、フロントから

コケてしまうみたい。

だからミシュランの前後のグリップバランスとマシンのハンドリングの

バランスが彼好みにピタっとハマると速いけど、

多くのサーキットではハマらないから打率が低い感じ。

その辺りを今年のマシンでどこのサーキットでも通用するベースセットを

見つけられれば一気にジャンプアップできる可能性は十分あるか。

まあ、MOTOGPマシンはスイングアームピボットとか

ステアリングヘッドとか調整できる箇所がメチャメチャあるだけに

迷いだすと袋小路にハマる危険性もあるんだけど・・・。

非常に読みにくいライダー。

 

マルケス以降世代

2018年にペドロサ、2019年にロレンツォ、2020年にドヴィジオーゾと

10年以上のキャリアをもつベテランライダーが一線を退いて

新たにエネア、マリーニ、マルティンが加入して

ますます世代交代の進むMOTOGPクラスですが

ここでは2021年のMOTOGPライダーの年齢層を可視化していきたいと思います。

 

かつて、最年少記録を次々と更新してみせたマルク・マルケス

既に最高峰クラス9年目で、すっかり若手から中堅、追う側から

追われる側になって久しいですよね。

 

去年、世界王者に輝いたホアン・ミールは初めてのマルクより若い世代の

王者ということになり、ホントにこれまでのWGPMOTOGPの歴史が

そうであったように、かつてのチャレンジャーが追われる側になり、

追っていた側がまた、追われる側になるという繰り返しの歴史ですね。

 

また、メーカーとライダーの契約状況を見ても、もはやマルクと決着付けの

済んでいる世代よりも、まだマルクと当たったことのない若い世代の

可能性に賭けている部分も見える感じがしますね。

ドゥカティがドヴィとの契約更新をしなかったあたりは、その辺も

含んでいるんじゃないでしょうか?

 

1979年生まれ ヴァレンティーノ・ロッシ

 

1989年生まれ アレイシ・エスパルガロ

1990年生まれ ヨハン・ザルコ、ダニーロペトルッチ

1991年生まれ ポル・エスパルガロ

1992年生まれ 中上 貴晶

1993年生まれ ロレンツォ・サバドーリ、マルク・マルケス

1994年生まれ フランコ・モルビデリ

1995年生まれ マーヴェリック・ビニャーレス、ブラッド・ビンダー、

       アレックス・リンス、ジャック・ミラー、ミゲール・オリベイラ

1996年生まれ アレックス・マルケス

1997年生まれ ルカ・マリーニ、エネア・バスチアニーニ、ホアン・ミール

       フランチェスコ・バグナイア

1998年生まれ ホルヘ・マルティン

1999年生まれ ファビオ・クオルタラーロ

2000年生まれ イケル・レコーナ

 

こうやってみても、マルクより若い世代が増えましたね~~~。

WSBもまとめるつもりですけど、あっちは逆にベテランが多いです。