金の切れ目が縁の切れ目?

今年に入ってから相次いで、GPライダーの装具メーカーとの

契約情報が流れていますが、新しくロレンツォ・バルダッサーリが今季から

ヘルメットをagvからHJCに変更することが発表されました。

 

これでagvはポル・エスパルガロ、ホルヘ・マルティンに続いて

3人目の離脱者が出た格好になりました。

 

コロナ渦でどのメーカーも台所事情が苦しいですから

契約金を多く出すメーカーにスイッチするというのも

ひとつの傾向かも知れませんね。

agvはロッシとミールの2枚看板がメインかな。あとミラー。

 

特にHJCはカル・クラッチロウの引退によって、最高峰クラスの

ユーザーが居なくなりましたから、ポルはどうしても欲しくて

それなりに積んだのかも知れないですね。

マルティンはシャークと契約)

 

この辺は欧州のライダーは割かしドライというか割り切っている感じがします。

被り心地で選んでいるライダーも居るとは思いますが・・・・。

 

それとイタリアンライダーというかVR46一派はagvにダイネーゼという

お揃いコーデでしたが、バグナイアを初め、それも崩れつつあるのかなと。

 

ちなみに現段階での情報に基づく最高峰クラスのヘルメットメーカーと

ライダーの契約状況は以下になっています。

 

アライ:ビニャーレス、中上

ショーエイ:マルク&アレックス・マルケス

agv :ロッシ、ミール、ミラー、モルビデリ、マリーニ

シャーク:マルティンオリベイラ、レコーナ、ザルコ

スオーミー:バグナイア、バスチアニーニ

ノーラン:ペトルッチ、リンス

HJC   :ポル・エスパルガロ、ビンダー

KYT   :アレイシ・エスパルガロ

スコーピオン:クオルタラーロ

 

 

 

狂った計画

2020年限りでドゥカティファクトリーを去った

アンドレア・ドヴィジオーゾが告白した内容によれば

ホルヘ・ロレンツォが加入した2017年以降、技術責任者の

ジジ・ダリーニャとマシンの開発について打ち合わせを行ったことは

無かったとのこと。

それはつまり、2017年にロレンツォが加入した段階から

ジジさん的にはロレンツォを中心に据えてマシンを開発していく方向に

方針を固めていたということになりますね。

 

それだけにロレンツォがわずか2年でチームを解雇されてしまったのは

ジジさんにとっては、まさに晴天の霹靂だったというところでしょうか。

(実際には2018年の頭の段階で解雇が決まった)

 

一説にはロレンツォ解雇の要因は、当時のMOTOGPライダーとしては破格の

12億円という契約金額で契約したにも関わらず、一年目にタイトル争いはおろか

優勝さえも出来なかったことで、スポンサー(アウディマールボロつまりフィリップモリス)が激怒し、早々に解雇を決定したと言われています。

 

ただ、これは現場のジジさんからすれば、理由があって、彼は移籍一年目は

ライダーのリクエストに応えることをしないんですね。

まず、現状のマシンに一年間載せて、データを揃えたところで、二年目から具体的に

動き出すのが、彼のやり方。

これはかつて、ジジさん在籍時のアプリリアにビアッジを解雇して、

原田哲也さんを迎え入れた97年シーズンと全く同じパターンで、

原田さんも一年目は全くフレームを改良してもらえなかったと言っています、

そして二年目にリクエストを反映したニューフレームを投入して

原田さんはタイトル争いに絡んでいくことになりました。

だから、ジジさんからすれば、ロレンツォが移籍してきた2017年シーズンはまだまだ

データを収集している段階で、本領発揮は2018年からと思っていた。

だから2017年の成績だけで判断してもらっては困るというのが本音でしょう。

 

実際、ホルヘの離脱が決まった後のジジさん、

ホルヘのコメントを思い返してみても2人の信頼関係には全く亀裂は生じておらず、

むしろ別れを惜しんでいるかのようでしたから

ホルヘの解雇劇にはジジさんは関与していない、彼の意思の届かないところで

決定していたことがわかりますね。

 

ただ、ジジさんからすれば、開発の主軸を失ってしまったわけですから、

それ以降の2シーズンはドヴィがランキング2位になったりしたものの

それは結果論であって、内容的には完敗だったと言えるでしょう。

 

だからでしょうか、2019年のオフシーズン、

KTMをクビになってフリーになっていたヨハン・ザルコの獲得に

ジジさんはかなり積極的に乗り出してきたんですよね。

結果的に、本来契約は残っていたカレル・アブラハムを押し出して、

ファクトリーのスタッフもセットでアヴィンティアに押し込むという強引とも

言えるやり方でザルコを獲得しました。

これ、当時もそこまで執着するほどのことかな?とやや疑問に思っていましたけど

ロレンツォが離脱した状況で、ロレンツォを主軸に据えて開発したマシンを

仕上げるのに、当時のライダーの中でザルコが一番適任であり、どうしても

彼が欲しかったと考えると合点が行く部分が多いです。

 

こうして見ていくと、ドゥカティは現場で指揮を取るジジさんと、彼以外の

首脳陣、社長だったりスポンサーとの意識のズレがあるなと思います。

特にドゥカティのように必ずしも企業規模がホンダやヤマハほど大きくない

メーカーの場合、フル参戦するにおいて、スポンサーマネーは必須で

そのスポンサーの意向にライダーラインナップが大きく左右される弊害が

出てしまっているように感じます。

 

そこを改善出来ない限りは、タイトルは難しいのではないかな・・・・。

 

勝つための体制

ここに来てようやく、チャズ・デイビスのゴーイレブン・ドゥカティ入りが

正式に発表されました。

常日頃からワークス体制以外では走らないし、自分にはその資格があると

公言しているチャズ・デイビスですから、このワークス放出

サテライトチームで走ることに対して受け入れるまで時間がかかったことだと思います。

 

ところで、今回のデイビス入りですが、今年のシーズンが終わった後から

スコット・レディングがずっと公言していますが、彼のタイトル獲得には

デイビスの存在が不可欠だと言うんですよね。

そのレディングの猛プッシュも影にあったんじゃないかというのが想像されるところ。

恐らくはデイビスサテライトチームにいながら、ワークスとほぼ同じマシン

体制を用意されているんじゃないでしょうか?

 

というのも、来季、レディングのチームメイトになるマイケル・ルーベン・リナルディは

レディングよりかなり身長が小さく小柄で体重の軽いライダー。

彼は決勝レースでもSPレース用のソフトコンパウンドを履いて最後まで持たせる

芸当ができるくらい体重が軽く、タイヤに優しいライダーです。

一方、レディングは身長も高いうえに、体重が非常に重いライダーですから

リナルディのデータは全く彼の役にたたないんですね。

対して、デイビスはレディングに身長、体重共に近く、彼のセットアップデータ

タイヤチョイスは非常に参考になります。

来季、ドゥカティがレディングにタイトルを獲得させるのであれば

サポート的な存在として、デイビスは必須の存在で、そのためにはサテライトに所属させて

レディングと同じワークスマシンを与えるのが一番です。

 

レディングがセットアップに迷っても、デイビスが好走しているなら

彼のセットアップをコピーすればいいわけです。

 

それにしても、リナルディでさえ、ゴーイレブン残留を望んでいたのにそれを

無視して、彼をワークスチームに抜擢し、デイビスを放り出したのは誰の

意思だったんでしょう?

結果的にデイビスはワークスから放り出されて、ワークスとほぼ同じ体制の

サテライトで走ることになり、ただただライダーの気分を害しただけにしか

思えない部分もありますね。

まあ、アルバイットの社長がリナルディにゾッコンとは聞いておりますが・・・。

ヤマハに何が起こったのか

シーズン終盤を迎えて驚天動地の出来事となった

ヤマハへのペナルティ。

これについて、ヤマハMOTOGPチームの監督であるリン・ジャービス

ヤマハ内部に起こった一連のペナルティに繋がった

出来事について、説明しています。

 

事の発端は昨年の中盤、今季使用するエンジンの仕様が固まり

各パーツサプライヤーへの発注を終えた段階でバルブ製作メーカーから

これ以上の製作は出来なくなる可能性があるという打診を受けたことから

だったようです。

当然、ヤマハはこの従来のサプライヤーに代わるサプライヤーを探し

こちらにもバルブを全く同じ仕様で作るよう発注しました。

 

仮に元々のメーカーをA社、新しいメーカーをB社とすると

ある段階で、ヤマハにはA社とB社のバルブが存在していたことになります。

 

2020年シーズンが始まる前、ヤマハはメーカーとしてそのシーズン使用する

エンジンはこれですと標準エンジンを提示する義務があるのですが、

これに搭載されていたバルブはA社のものでした。

 

一方、実際にレースで使用することになったエンジンにはA社とB社のバルブが

混在して搭載されており、この段階でヤマハとしてはバルブのメーカーが違っても

下請けに発注している仕様が同一で、これは同一製品とみなして問題なし

という判断を下したようですね。

あるいは、このまま、何も起きなければこの問題は日の目を見ることなく、

公然にさらされることは無かったかもしれません。

 

ところが、実際はそうはならず、このB社のバルブを搭載したエンジンが

MOTOGPの開幕戦となったヘレスでのスペインGPでトラブルが発生。

原因を調査した結果、B社に発注したバルブに製品不良があったようです。

これを受けて、ヤマハはB社のバルブを正常な製品に交換しようとしたものの

それは規定違反であるといおうことから、引き続き使用。

ただし、破損の恐れがあるため、レブリミットを下げて対応をしたようです。

 

マニュファクチャラー協会に報告書を提出して、認可が得られれば

合法的にエンジンの凍結を解除してバルブを交換できるのに、

それをせず、引っ込めたのは上記の理由だったからとのことです。

 

その辺の一連の出来事が現時点になって、全て調査が終わったということですね。

 

いずれにせよ、ヤマハファンとしては、ものすごく残念な出来事ですね。

FIMがタイトル争いの興を削がないために、ライダーのポイントを剥奪しなかったのは

救いかも知れませんが、これは全ポイント剥奪くらいのインパクトのある出来事。

特にヤマハは慎重すぎるぐらい慎重な社風だけにこれは無いよというところ。

 

この汚点はずっと残ってしまうんだろうな。

2020年シーズンの後味を悪くする出来事。

 

 

秋のヨーロッパとタイヤの関係

ミシュランの公式発表によれば、アラゴンGPから

タイヤアロケーションの登録できる数量を変更するそうです。

 

これはレースウィークが始まる前に、MOTOGPでは

フロント10本、リヤ12本のタイヤを事前登録するのですが

そのフロント10本の内訳の中で、これまでは最大1種類のコンパウンド

5本までしか登録は出来ませんでした。

 

つまり、今のように低い路面温度でソフトを沢山使いたくても

5本までしか登録出来ませんから、予選やレースに向けて新品を

温存すると、残り3本でFP1,2,3、4、WUPをこなさねばならず

特にQ1,2の進出を決めるFP2,3のタイヤの使い方が難しくなりますね。

実際、予選を見ていても2回のアタックのうち、2回目のアタックは

リヤのみ新品で、1回目のアタックで使ったフロントタイヤを

そのまま使うケースが多いですが、これはもう新品ソフトをレースに温存すると

在庫が無いからでしょうね。

 

それとその5本以外に登録できるミディアムであったり、ハードタイヤは

今の状況ではまず、出番はありません。

路面温度が低く、タイヤの作動レンジを外れてしまうため、タイヤが

本来のグリップ性能を発揮することができないからです。

 

実際、カタルニアとルマンではKTMポル・エスパルガロ

ミゲール・オリベイラはフロント側にミディアムを装着しましたが

ポルいわく、全然グリップしなくって、何度もフロントから

転倒しかけたそうです。

嫌が応でもフロントにもソフトを履かざるを得ないのが今の状況。

 

こうした状況を受けて、ミシュランはフロントタイヤ10本に関して

1種類のコンパウドの登録できる数量を6まで増やすとのこと。

これでFP1,2,3,4、予選、レースで使えるソフトタイヤが

一本増えますから、だいぶ、やりくりは楽になることでしょう。

 

リヤに関しては従来から1種類につき最大6本まで登録できますから

何とか、これまでやりくりしてきたようですね。

 

ただ、その結果アラゴン以降のレースはほぼ全メーカー、ライダーが

前後ソフトという組み合わせで戦うしかなくなるわけで、

違う意味での我慢大会というか、タイヤの使い方の争い

という側面が強くなっていきそうですね。

もしも、マルクが居たとしても全然思うように走れる状況じゃ

ないでしょうね。

 

 

雨が生んだ波乱

フランスGPは全く予想外の展開となりましたね。

それもこれも雨、突然の雨が降ったことで全車レインタイヤ装着の

ウェットレースとなったことで、そのタイヤの性能を引き出せるかどうかが

大きな鍵になったようです。

 

ドライでもこの寒さの中、いち早くタイヤを温めて好調だったドゥカティ

雨でも変わらず、序盤から逃げを打ちましたね。

中でも体重のあるペトルッチはペースが良かったですね。

ドライではその体重ゆえに、タイヤの磨耗に苦しめられる彼ですが

この寒さではその体重が逆に利点として働きタイヤの性能を引き出したようです。

 

逆に最悪だったのがヤマハで非常にグリップ感が薄かったというか、

ウェットでのセットアップが全くダメで、グリップ感は薄いし、なかなかタイヤに

熱が入らなかったようで、ロッシはリヤからスリップダウン転倒。

ファビオ、マーヴェリック、フランキーは全くペースが上がらずポイント圏外という

最悪のレース展開になっちゃいましたね。

ファビオいわくリヤタイヤのグリップが全く無かったそうです。

ドライだとリヤのスピニングが多くタイヤがオーバーヒート傾向のヤマハですから

ウェットだとタイヤにトラクションがかからずタイヤが潰せないため

いつまで経ってもタイヤの温度が上がらない状態だったようです。

 

この雨の中、ギャンブルを仕掛けたのがスズキの2台とザルコで

水量が減っていくことを見越して、固めのミディアムレインでスタート。

中でもリンスは彼のスタイルであるハードブレーキングが功を奏したのか

序盤からレインタイヤに熱を入れることに成功してトップ争いに加わっていましたね。

最終的にはスリップダウンしてしまいましたが、本人も勝ちを狙ってプッシュし続けると

レース後コメントしています。

一方なかなか熱が入りにくかったミールとザルコは雨量が減った終盤にわかに

ペースアップして、上位に進出してみせました。

もう少し雨量が減るのが早ければもっと前に行ったでしょう。

 

そしてアレックス・マルケス

とにかくフロントタイヤの性能を引き出すにはハードにフロントを攻める必要のある

RC213Vですが、レインタイヤだとそこまで攻め込む必要はなく、むしろスムーズに

走る必要があったのが、彼本来の乗り方にマッチしたように思います。

だから、ドライであれが出来るかというとまだまだだとは思います。

 

いずれにしろ終盤に来て、。ここまで波乱のレースを生むとは・・でしたね。

もう、ヨーロッパも秋、これからも寒く雨のレースもあるでしょうから

タイヤの温度を上げやすいマシンが優勢になってきそうな予感がします。

その点、ヤマハは今後は苦戦が予想されます・・・・。

寒さが分けた予選

フランスGPは予選が行われ地元でポイントリーダーの

ファビオ・クオルタラーロがポールポジションを獲得しました。

 

対照的にランキング2位のホアン・ミールは予選14番手となっています。

 

両者を分けたのは、予選というわずか一周のウォームアップで

タイムアタックに入った時のフロントタイヤの熱の入り方の

ヤマハとスズキのマシン特性の違いでした。

 

思い起こせばレッドブルリンクでフロントブレーキがオーバーヒートする

ほど、前輪荷重が大きいヤマハはそれだけフロントに負荷がかかるマシンで

それが今回のような非常に寒いコンディションではタイヤに熱が入りやすく

ライダーが信頼を持ってアタックできた背景にあると思います。

 

対照的にブレーキングで奥まで突っ込める、それだけフロントタイヤの

負荷が小さいスズキのマシンはフロントタイヤへの負担が小さく

それがなかなかタイヤに熱が入らず、ライダーが信頼感をもって

攻め込めないという特性がはっきり出た形でしたね。

 

ただ、決勝レースは25周を超える長丁場で、しかもブレーキングポイントが非常に

多いルマン・ブガッティサーキットですから、このヤマハとスズキの特性が

レースでのフロントタイヤの消耗に大きく響いてくることでしょう。

 

ファビオはとにかく序盤にリードを築いて、早々にフロントタイヤの

マネージメントに入りたいはず。

対してミールは最終的にトップの位置に立てるように、25周トータルでトップに

追いつく戦術を考えて、ジリジリと追い上げを図ることでしょう。

 

ここでキーになってくるのは短い直線でも抜群のダッシュ力を誇る

ドゥカティが上位にいることで、序盤彼らがファビオの前に立ったら

あるいは、中盤ミールの前に立ちふさがったら、ファビオとミールの

作戦に狂いが生じるように思います。

 

果たしてどんな決勝レースになるのか。

ただ、リヤタイヤがオーバーヒート傾向のヤマハに朗報なのは

決勝は予選よりさらに気温が下がるという予報が出ていることですね。

少なくともリヤタイヤに関しては心配しなくても良さそうです。