WSB ドニントン レース1 雑感

ジョナサン・レイが今季初のポール獲得。

バウティスタは予選から転倒が多く

一発のタイムは出していたものの安定感は欠く。

ということで、レイの今季初優勝の期待が高まったわけですが・・・。

 

終わってみればバウバウの圧勝でしたねー。

序盤こそブレーキングミスしてオーバーランしてましたが

序盤は燃料満タンで車体が重いですから、ハードブレーキングで

行き過ぎてしまったというところでしょうか。

しかし、数周してマシンに慣れてくると一気にペースアップ。

 

あっという間にトップに立つと、トプラックをも置き去りにしての

独走劇となりました。

 

そのバウティスタを追撃したトプラックいわく、

去年はストレートで離されても、ブレーキングで追いつくことが

出来ていたが、今年は無理なくらいストレートの加速がドゥカティ

速いと。それでいて、タイヤにも優しいそうです。

インターバルの間にもブレッガやピッロがマシンテストを行ってましたからね。

だからトプラックは日本のメーカーは考え方を改めないといけない

と警鐘を鳴らしていますね。

それはヤマハ以外のメーカーにも向けての発言だと思いますが

ドゥカティのようにレースのインターバルの間の絶え間ないデベロップメントが

結果に結びつくということでしょう。

実際、これまでのスーパーバイクはシーズンが始まってしまうと

ほとんどマシンの開発はされず、シーズン通してほぼ同仕様のまま

戦ってきましたが、シーズン中も絶え間ない開発を継続するというまるで

MOTOGPのような戦法をドゥカティスーパーバイクにも持ち込んできた。

それがリザルトに表れているということでしょう。

そう考えると来期、彼が日本のメーカーでは無いBMWを選んだというのも

何となく理解できる面がありますね。

 

このあたり、日本のメーカーは開発体制、予算を見直さないといけないかも

知れないですね、MOTOGP同様。

MOTOGPのF1化

日本メーカーが大苦戦している。

去年あたりからそんな声が聞こえてくるようになりました。

日本メーカーは終わりだという悲観的な事を言う人も。

まあ、この手の発言は言いたい人が言ってるだけで、

根拠は希薄なんで無視するとして、ここでは何故、ここまで

日本のメーカーが苦戦するに至ったかを考察してみたいと思います。

 

そもそも欧州を中心に展開されるMOTOGPに参戦することは

日本という地理的ハンデを最初から抱えて参戦しているわけです。

だから、これまでの日本メーカーはその地理的不利を跳ね返すロジック

例えば、日本で造られたものを迅速にヨーロッパの拠点に送り

ほぼタイムラグなく、実践に投入することが出来ていました。

かつて、MOTOGPにタイヤ供給をしていたブリヂストンは翌週末に

使用するタイヤを前の週の日曜日に作って輸送していたそうです。

つまり、その位の時間感覚で仕事が出来ていたんですよね。

ところが、コロナ+ウクライナ紛争のダブルショックでこれが出来なくなった。

ひとつはロシア上空を飛べなくなったことで物理的に時間がかかるようになった。

もうひとつは、輸送コストが増大したことによってこれまでのような

迅速な対応が出来なくなった。という背景がありますね。

 

それと個人的にはこれが一番大きな要因だと考えているのですが、

MOTOGPがどんどんF1化しているということ。

特に今のMOTOGPは2016年に制定されたレギュレーションから

ほぼ大きな変更が無く、既に10年が経過しようとしています。

そうなると、マシンそのもののポテンシャルはほぼ似たようなレベルで

拮抗しており、つまり幹はほぼ同じで差をつけるのは枝葉の部分。

この枝葉の部分というのをレギュレーションの隙間を見つけて

自分らに有利なデバイスを見つける能力と言い換えてもいいかも知れません。

F1の歴史もそんな感じなんですよね。

特にエイドリアン・ニューウェイという人は過去にもこのレギュレーションの

行間を縫って、デバイスを作るのが上手い人で、そうやってライバルを出し抜いてきました。(そのデバイスが有効に機能するのが前提ですが)

 

そうなってくると、この行間を読んで自分らに有利なデバイスを見つけて

取り入れるのが上手いか下手かが今の差に結びついていると思います。

そしてこの行間を読むという作業が海外のメーカー、チームは上手く、それが

現在の「差」を生んでいるように思います。

それはひとえに、MOTOGPに参戦している海外のメーカー(とチーム)と

日本のメーカー(とチーム)の成り立ちが違うという側面も関係しているかと。

つまり、日本のメーカーの参戦体制は、ただ目の前のレースに勝つ

だけではなく自社のエンジニアの育成も兼ねている。

だからレース畑専門の出身者で無くても社内的にその役職に抜擢され

前任者の元で育成されて責任者なりになっていく。

そこには会社の組織としての継続性も含んでいますね。

対して、海外のメーカーは目の前のレースに勝つための人材を

内部でも外部でもとにかく、有用と思えば引っ張ってきて抜擢する。

育てるという考え方、その組織に従属するという考えは希薄で、

言ってみればF1チームのエンジニアに近い存在でしょう。

よりいい待遇があれば他チームに簡単に移籍します。

実際、今期飛躍を遂げているKTMは過去にも日本のサプライヤーから

技術者を引き抜いたり、最近ではドゥカティからチームマネージャーや

技術責任者の腹心、チーフエンジニアなどを引き抜いています。

 

まとめると、日本のメーカーは組織の永続的な運営の観点から

人事を決定するのに対して、海外のメーカーは刹那的、今勝つための

人材を採用するという違いがあると思います。

個の突破力に期待していると言いますか。

その差が、先ほど述べた、レギュレーションの行間を読んで

ライバルを出し抜く技術を思いつく人材がチームに居るか居ないか

引いては、現在の違いを生んでいる要因と考えられますね。

 

MOTO2キャリア

小椋選手に対して、2年目にしてはよくやっている

という声が聞かれたので、現在のMOTOGPライダーの

MOTO2クラスでの在籍年数とキャリアをまとめてみました。

 

マルク・マルケス 2年(2012年王者)

ヨハン・ザルコ  5年(2015、2016王者)

ルカ・マリー二  5年

マーベリック・ビニャーレス 1年

ファビオ・クオルタラロ 2年

フランコ・モルビデリ 4年(2017王者)

エネア・バスチアニー二 2年(2020王者)

ラウル・フェルナンデス 1年

中上 貴晶       6年

ブラッド・ビンダー   3年

ジョアン・ミル     1年

アレイシ・エスパルガロ 1年

アレックス・リンス   2年

ポル・エスパルガロ   3年(2013王者)

ファビオ・ディ・ジャナントニオ 3年

フランチェスコ・バニャイア 2年(2018王者)

アレックス・マルケス   5年(2019王者)

レミー・ガードナー   5年(2021王者)

ミゲル・オリベイラ   3年

ホルヘ・マルティン   2年

WSBドニントン あれやこれや

終わってみれば、ヤマハのトプラックが今季初の

ハットトリックを達成し、去年の王者がようやく

本領を発揮しましたね。

開幕から違和感を覚えていた車両にクレームをつけてどんどん

要望に合わせていったら、ほぼ去年モデルになってしまったいう話。

元々、限界まで攻め込むスタイルの彼ですが、その限界付近の挙動が

掴みやすいというか、手の内に入れるマシンが彼のお好みのようですね。

滑りやすいドニントンの路面で見事に攻め切りました。

 

逆に苦戦したのはレイで、立ち上がり、ブレーキングどちらも苦しんでいましたね。

立ち上がりの加速で明らかにヤマハに負けていましたし、ブレーキはオーバーヒートで

ジャダーというか、振動が発生してましたね。

これは立ち上がりのトラクション同様、今はリヤタイヤのストッピングパワーを

利用しないと、フロントだけでは止まり切れないのが当たり前で、

リヤのグリップが足りてないと、このリヤのストッピングパワーも足りなくなって

フロントブレーキの負担が増大する。その結果のオーバーヒートかも知れません。

正直、詳細はわかりませんが・・・。

 

今回のサプライズはカレックスのスイングアームを投入したBMW

3レースのリザルトが4位、3位、5位と今季最高を記録しました。

たかがスイングアーム、されどスイングアーム。

これを投入した結果、トラクション、ストッピング性能、バンプライド性能

全てが向上したとレディングとバズはコメントしています。

改造範囲の狭いスーパーバイクでスイングアームは非常に大物パーツですが

これの性能がここまで全体の性能に寄与していることを証明した形ですね。

これから更にセットアップが煮詰まってくると、もう少し上位、今の

トップ3に割って入ってくることもあるかも知れません。

 

逆に非常に苦しい週末を送ったのがホンダで、レコーナは腕上がりに

見舞われてましたし、フリー走行ではコースアウトも喫しています。

元々、曲がらないシャシーに対してリヤを滑らせることで、マシンの向きを

変える乗り方をしていましたが、ドニントンは非常にグリップの低いコースですから

リヤを滑らせる前提のフロントのグリップがそもそも足りなければ、

曲がらず、コースアウトしてしまうのは道理です。

このマシンの持っている根本的な問題点が浮き彫りになった感じですね。

事前テストを行っていたというのに。

 

野佐根君は終始攻めあぐねたというのが正直な感想。

3レースとも入賞圏外というリザルト。

グリップの薄いこのサーキットの攻め手が最後までわからなかったという

感があります。

グリップの高い路面が多い日本のサーキットで戦うと、こういう滑りやすい

コンディションでいかにマシンを曲げて、止めるのかのテクニックが

身に付きにくいというか、海外のライダーとの差を感じることがあります。

中上君なんかもアルゼンチンではモルビデリと大きく差がつくポイントでした。

 

今季出遅れたトプラックでしたが、ここに来てようやく去年の速さ、

強さを取り戻した形で、今後はレイとバウティスタに割って入って来そうですね。

次回はレイにとって苦い思い出のあるチェコ モストです。

またしても混戦、乱戦の予感がしますね。

モストは2週間後に開催となります。

鈴鹿8耐勢はこのモストが終わって、即移動になりますね。

 

それぞれのドニントン

WSBは前回のミザーノから一か月のインターバルをおいて

ドニントンパークで第5戦を迎えます。

 

このドニントンと次のモストはシーズンを占う意味でも

非常に重要なレースになりそうですね。

 

カワサキジョナサン・レイは去年、このドニントンのレース2で

フロントからスリップダウンを喫し、リタイアとなっています。

去年のZX-10Rはフロントタイヤの旋回性に問題を抱えており、

ヤマハのトプラックと同じペースで走るとフロントの挙動が不安定に

なる傾向があって、去年の転倒はまさにそれだったか。

結局、この一件以降、カワサキ+レイ陣営はヤマハ+トプラックに対抗するために

フロントに、ピレリのデベロップメントタイヤというハイグリップな

タイヤを使うという、カワサキ陣営いう所の「試したことの無いチョイス」を

選ばざるをえなくなり、これが更なる転倒を誘発することになりました。

次のモストではレース中盤にして完全にフロントが終わってしまって

あっさりと転倒する羽目になりました。

 

去年の反省から今年はショーワが新しいフロントフォークを投入、今年の

ZX-10Rは非常によく旋回するマシンになって去年のネガを払しょくできているように

見えますから、あれから一年ぶりのドニントンでヤマハ+トプラックにどういう

戦いぶりを見せてくれるのか、ここで互角以上の走りを見せるなら、今期は

ずっと高値安定で行けると思います。去年のようなことは起きない。

今回、ピレリはフロントに通常のタイヤ以外にデベロップメントタイヤを

持ち込むそうですから、彼らがどのタイヤを選ぶかも興味深い所です。

 

一方、ディフェンディングチャンピオンでありながら、今期わずかSPレースの

一勝のみに留まっているトプラックは相変わらず一戦一戦負けられない戦いが

続きますが、現状ジリ貧って感じですね。

ヤマハは迷った末、全部去年の仕様にマシンを戻したようですが、去年のマシンということは

実質的に戦闘力の上乗せが無い状態になりますから、そこが去年から戦闘力を上積みしてきた

カワサキドゥカティに後れを取っている要因ですかね。

去年と同じような走り、ペースで走ってもライバルはその上を行っちゃうわけですからこれでは勝てない。

変わらず、厳しい戦いは続くと思います。

 

今季、ここまで絶好調のドゥカティ+バウティスタですが、ドニントンはちょっとした

鬼門で、ここはドゥカティもバウティスタも勝ったことがありません。

ドニントンは昔ながらのオールドレイアウトコースで、

前半はダラダラした曲率の長いコーナーが続くため、ドゥカティのパワーが威力を

発揮するのは、終盤のストップ&ゴー区間だけなんですよね。

ああいうダラダラとしたコーナーはコーナーリングスピードの高さが求められ

直4マシンのようなレイアウトのマシンの方が有利に思います。

ここでも勝つようなら、今期のタイトル本命は間違いないでしょうけど、

勝てないとしてもこの不利なコースで、どの順位でゴール出来るか。

 

また、今回はBSBからワイルドカードが2名走ります。

BSBはWSBと同じくピレリワンメイクタイヤを使用していながらも

テクニカルレギュレーションが異なるため、WSBで走るには

それ用のマシンを仕立てないとならないので非常にハードルは高いです。

実際、タランの乗るマシンはBSBで使うモーテックのワンメイクECUから

WSBのヤマハが使うマニエッティマレリにECUを載せ替えているそうです。

ということは電装系を全部新規で作り直しているということですね。

チームにとっても非常に負担が大きいところだと思います。

まあ、ヤマハのワークスチームであるパタヤマハはイギリスが本拠地ですから

少なからずサポートがあったであろうことは容易に想像がつきます。

 

さて、ワイルドカードの一人は去年のBSB王者 タラン・マッケンジー

本当は今年のアッセンから出る予定でしたが、怪我によってデビューがここまで

ずれ込みました。

彼としては、ここでいい走りを見せて、来期のWSB行きの交渉を有利に進めたいところでしょう。

年齢的にはGRTヤマハのガーロフや野佐根と同年代でもありますからね。

 

もう一人は今年のマン島TTを圧勝したBMWのピーター・ヒックマン。

今、乗りに乗れている彼ですから、初めてのWSBでどんな走りを見せてくれるか。

その年のマン島ウィナーがWSBに出るというのは結構レアなケースじゃないでしょうか。

こう言ってはなんですが、成績はボロボロのBMW陣営ですから、入るスペースは

あるようにも見えますが、BMW的にはマン島ウィナーの称号はプロモート効果が

抜群ですから、どちらかというとヒックマンには公道レースで頑張って欲しいかも・・。

 

ドニントンは16、17日が決勝レースとなります。

 

 

 

 

その決定

スズキのMOTOGPからの撤退がDORNAに正式に認められ

今回限りでの撤退が正式に決まりました。

休止でなく、撤退であることから、完全撤退、復帰は無いと

言われていますね。

加えて、EWC、世界耐久へのファクトリー参戦も今季で

終了することが合わせて発表されました。

と言っても、EWCへのファクトリー参戦は去年のヨシムラと

SERTとの合弁チームからですから、わずか2年の活動でしかないですけどね。

 

このわずか2年の活動で終了という状況、そしてMOTOGPからの

急激な撤退など一連の急激な体制変更は本当に計画的なものではなく

スズキの社内で、大きな地殻変動が起こり、それによりレース活動を

中止せざるを得ない状況が生じたということなんでしょうね。

 

噂ではトヨタの一派が経営陣に加わり、彼らがレース反対派、

一方、社長を始めとするある一派はレース賛成派で、

この両派閥による社内抗争があり、反対派が勝ったのが今年の話ということらしい。

 

しかし、反対派の人たちがどのように捉えているのか知りませんが

世界には2輪レースで活躍するスズキ車を見て、スズキを知り

スズキのユーザーになった人たちも少なからずいて、特に趣味性の高い2輪は

そういう導入の仕方は多いでしょう。

そういった機会を一切失ってしまうのは企業としてプラスになることは

何も無いように思いますね。

まあ、単純に机上のここ3,4年先のそろばんだけ弾いて決定しているのかも知れませんが・・・。

 

いずれにしろ、ホントに残念な決定ですね。

青田買い

ファビオ・クオルタラーロ、ニッコロ・ブレガ

デニス・フォッジア、ラウル・フェルナンデス、イヴァン・ゲバラ

ロレンツォ・ダラ・ポルタ、ダニエル・ホルガド。

これは旧レプソルCEVのMOTO3で年間王者に輝いたライダー達です。

 

王者に輝いているライダーだけではなく、ペドロ・アコスタや

ジョアン・ミル、アロン・カネット、佐々木君に鳥羽君、小椋君

アルバート・アレナス、デビッド・ムニョスなどなど枚挙にいとまがないほど、

輩出しているのがレプソルCEV選手権です。

 

基本的に16歳以上しか出場権利が無い世界選手権に対して

(来期から18歳以上)、レプソルCEV選手権は14歳からでも出場できるため

(来年から16歳以上に改訂)世界選手権に出る前の肩慣らしとしては最高の

舞台とも言えるでしょうね。